プロフィール
1938年、モスクワの音楽一家に生まれる。優れた音楽家であったドイツ出身のヨハン・ヘルマン・リヒテルを祖父に持ち、また父のルドルフ・カール・リヒテルは、ピアニスト兼教授、母のアンナ・リヒテルは、ピアノ講師であった。
第二次世界大戦の間に、両親はカザフスタンに送られ、エレーナ・リヒテルは、カラガンダにおいて、両親から音楽の初等教育を受ける。
1957年、モスクワ音楽院に入学、名高いロシア・ピアニズムの教授者であるゲンリヒ・ネイガウスのクラスで学ぶ。1962年に首席で音楽院を卒業、その後も大学院生として研究を続けた。G・ネイガウスの死後は息子のスタニスラフ・ネイガウスに師事。また彼のアシスタントとしても活動した。
現在、モスクワ音楽院のピアノ科教授として教鞭をとり、その弟子の中からは30人を上回る国際コンクール入賞者を輩出している。(スタニスラフ・ブーニン、ラドゥ・ルプー、ディーナ・ヨッフェ、イローナ・ティミシェンコ、エカチェリーナ・リヒテル、北野裕司等)また、ロシア・モスクワ、ドイツ、日本、ユーゴスラヴィア、スロヴァキアのマスタークラスで指導を行う。
ロシア、ドイツ、日本を中心にコンサート活動も活発に行っており、チェリストのナターリャ・グートマンなど有名な音楽家との共演も多い。レパートリーとしてはJ.S.バッハ、モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、シューマン、リスト、チャイコフスキー、スクリャービン、ラフマニノフ、プロコフィエフ等の作品があげられる。1993年にはスクリャービンのソナタ全10曲を、2000年にはショパンとリストのソナタ、スクリャービンのファンタジーのCDをリリースした。
彼女の演奏方法の特質として、心に迫ってくるような切れ味鋭く変化に富んだ音、がっちりした構造の中にも感じられる即興的な味わい、巧妙なハーモニーの扱いが挙げられる。
教育者としてのエレーナ・リヒテルは、名教授であったG・ネイガウスの伝統を受け継ぎ、生徒の内面的な特徴および彼ら自身の創造的な取り組みの重視、音と音楽の間に深い関連性を与えていくというレッスン形態を目指している。
1992年「ゲンリヒ・ネイガウス」を執筆。更に2002年、著書「G・ネイガウス回顧録」がモスクワで出版された。