2016年10月16日(日)TIAA音の博覧会 2016【ギャラリー】
2016年10月16日(日)に日暮里サニーホール コンサートサロンで
「未来に残すべき俊英作曲家による作品群」と題して、TIAA音の博覧会 2016 が開催されました。
東京国際芸術協会が主催するTIAA全日本作曲家コンクールで受賞された作曲家様方の現在の作品を、作曲家様本人の解説によって人柄を感じながら聴いて頂くコンサート「TIAA音の博覧会」で5名の作曲家様方の作品をお届けいたしました。当日のトークとは少し違う部分もございますが、演奏会前に作曲家様方にアンケートした内容を掲載させていただきます。
【 野村朗 】
名古屋音楽短期大学音楽科作曲専攻卒業。小櫻秀爾氏、故有賀正助氏に師事。闘病と私大職員とを並行しつつ、「いのちの輝き」をテーマとした作曲活動を続けてきた。名古屋と東京で作品リサイタル3回。ミュージカル「おはよう!アント」(平成3年度愛知県地方振興補助事業)、連作歌曲「智恵子抄」、合唱曲「永訣の朝」、「鎮魂歌・あざみの花に」、ソナチネ「Enfance finie(過ぎ去りし少年時代)」など作品多数。全日本作曲家コンクールに9回連続で入賞を果たす他、東京国際歌曲作曲コンクールに連続入賞。2016年度国際芸術連盟作曲賞を受賞。名古屋音楽大学同窓会会長。(学)同朋学園評議員。東京国際芸術協会会員、国際芸術連盟作曲家会員。
歌曲「永訣の朝」(詩:宮澤賢治) 演奏:森山孝光(バリトン) 森山康子(ピアノ)
<曲目解説>
今にも命が尽きようとする病床の妹トシが「雪みぞれを食べたい」と言います。曲がった鉄砲玉のように雪降る庭に飛び出した賢治でしたが、激しい慟哭のような悲しみと、祈りに似た静かな悲しみと、二つの悲しみに揺さぶられてなすすべもなく立ち尽くしてしまうのでした…。妹は既に死を受容し、残される兄を案じてさえいるのですが、賢治の心は千々に乱れ、苦しみます。そして、賢治は「一つの歌」を歌うのでした。清浄な、心からの、たった一つの歌。その歌とともに、やがて賢治の心はトシの魂と一体となり、神仏の恩寵に満たされていくのでした。第19回TIAA全日本作曲家コンクール歌曲の部・第2位受賞作品。
<出品曲誕生秘話>
最初は、東京芸大奏楽堂日本歌曲コンクールに出品したいと考えて書き始めたのですが、悩みに悩んで筆がすすまず断念。名古屋市内で開催した作品リサイタルで初演しました。その後、後半を大きく書き直し、同時に「混声四部合唱曲」バージョンを制作して、歌曲と合唱曲とを両方ともTIAA全日本作曲家コンクール歌曲の部並びに合唱の部に出品しました。両作品の近似性に鑑み、同一作品に包括した形で「第2位」とのご判断でした。今日、聴いて頂くのは、その「歌曲バージョン」です。
初演時、本日の演奏者でもある森山孝光さんが、丈の長い黒いコートを着て、「宮沢賢治になりきって」歌って下さったことが忘れられません。
<最近の主な活動>
東日本大震災被災者に捧げる思いを「懐かしい未来へ」~もう一つの鎮魂歌~ という作品に仕上げました。かつて、震災から二年を経た春に宮城県南三陸町の防災庁舎の廃墟の前に立ち、その感慨を歌にした「鎮魂歌・あざみの花に」という作品を書き上げましたが、今回の作品はその続編。震災から5年の歳月を経た現地を見て回り、被災者の皆さんのお話しを伺いつつ、「未来への希望」と「生きることの意味」を問う作品となりました。3年の間を置いて書かれたこれら二作品をもって、被災地の方々に聴いて頂く機会を創っていきたいと考えています。
<今後の主な活動予定>
1)三好達治、八木重吉、髙村光太郎等の詩の世界に寄り添い、引き続き「歌曲」を書いていきたい。
2)東日本大震災被災者への思いを、音楽で綴る作業を続けていきたい。
3)私の郷里、岐阜県養老町に伝わる「多芸七坊(たぎしちぼう)焼失伝承」を題材に、脚本・作曲・オーケストレーション含め全て手作りの創作歌劇を、「生涯のライフワーク」として書き上げたい。
【 竹鼻雪乃 】
尚美学園大学4年次在学中。作曲を愛澤伯友、川島素晴、小島有利子の各氏に師事。第18回TIAA全日本作曲家コンクール室内楽部門第3位入賞。第20回東京国際室内楽作曲コンクール入選。
「白の上の色彩」 演奏:田上瑞帆(ピアノ)
<曲目解説>
この曲は、冒頭で示される7つの音を主軸にして作られています。その7つの音は、ファ♯を中心にして、上下に7度ずつ並べた音を使用しています。静謐な響きの中に唐突に現れる打撃音、時折現れるトリルなどは、苛立ちや焦燥感などの感情であり、「どんなに色を作っても、なかなか理想の色が出せない」というもどかしさを表しています。そして、終始それは収まることなく、7音を残して曲は閉じます。
<出品曲誕生秘話>
今回の出品曲は3年前に書いた曲です。その時読んでいた小説の中に「パレットの上で色を作ろうとするが、思い通りの色が出ない」というような文章が出てくるのですが、その文章からこの曲を思いつき、キャンパスに色を塗ろうとするけれども、中々思い通りの色が作れないもどかしさを描いた曲としました。
<最近の主な活動>
今は大学4年に在籍していますので、大学内での創作活動に従事しています。その他には、出版社からの委嘱を受けて、吹奏楽曲や小学生向けの金管バンドの曲などを書いています。
<今後の主な活動予定>
今後は進学を予定しており、作曲の勉強と創作活動を続けていきます。
【 洪純純 】
台湾台北生まれの女流作曲家、4才頃からピアノを始め、七歳頃からピアノの曲を作曲する。米国ニューヨークのマンハッタン音楽院で学士課程とカルフォルニア州立大学バークレー分校で修士課程を修了し、その後パリ国立高等音楽院で、作曲を勉強した。さらに、自由な音楽創作空間を求めて、ロサンジェルスの UCLA Extensionで、映画音楽を学んだ。交響曲 “唐明皇と楊貴妃”は サンフランシスコ女性の交響樂団のリーディングセッションに入選し、当楽団によって演奏録音された。当年楽団が演出した曲目は 米国 ASCAP アワードを受賞した。台湾ドキュメンタリー映画 “辛奇監督の物語”にあるオリジナル音楽の作曲と演奏を担当。
「生命の輪:ピアノ獨奏曲」 演奏:洪純純(ピアノ)
<曲目解説>
この曲は、単純なものから複雑なものまで、人間の生活の説明です。
災害を体験することも、感じを癒します。
曲の第一部分:テーマプレゼンテーションの前進 と 第二部分の和聲準備、その内容から生まれピッチとハーモニーを使用します。
不協和度の增加により、第二部分の聴覚は感覚を示すように変更します。
第三部分で、不協和サウンドの減少とテーマの調性バージョンのプレゼンの寛ぎ、人を励ますメロディーとハーモナイゼーションの表現。
曲は、有調と無調で 音響変化に加えて、それで、オリエンタルスタイルで音程と音楽的要素を使用します。
<出品曲誕生秘話>
この曲を書く理由、人間の災害と不幸を音楽に回し、そして、私は現実にこれらの感じは まだ 希望と太陽の光に 変えることを願っています。
<最近の主な活動>
1.いくつかの作品は 米国のウェブサイトで売って、前の作品”空間三重奏”も。
2.今交響曲を ゆっくりと書き続けます。
<今後の主な活動予定>
今後は、この交響曲は TIAAオーケストラによって演奏されることを願っています。私は 数年前に TIAA賞をもらいました。常にこの励ましを覚えています、協会に感謝したいと思います。
台北で作曲リサイタルも開催したいと思います。
【 杉森雅大 】
3歳頃からピアノに親しみを持ち、小学校に入学した頃より名古屋音楽大学教授大口光子氏に師事。東海中学、東海高校、東京大学医学部医学科を卒業し現在に至る。
1998年、第6回中部ショパン学生コンクールにて本選出場。第16回(1999年)および第18回(2001年)日本ピアノ教育連盟ピアノオーディションにて本選出場。2001年夏、第16回蓼科音楽祭リサイタル部門に出場、蓼科賞受賞。同冬にピアノリサイタル開催。第23回(2006年)および第24回(2007年)日本ピアノ教育連盟ピアノオーディションにて優秀賞受賞。同第28回(2011年)本選出場。第3回東京かつしか作曲コンクール入選。第18回および19回TIAA全日本作曲家コンクール入選。第20回同コンクールにて奨励賞受賞。
「Girls Talk」「雛菊」 演奏:杉森雅大(ピアノ)
<曲目解説>
「Girls Talk」
イラストレーターnagmeg氏の同タイトルのイラストにインスピレーションを得て作曲しました。子供のために、というコンセプトで作りましたのでテクニック的にはそんなに複雑ではありませんが、その分かわいらしい雰囲気が伝われば嬉しいです。
「雛菊」
私たちの運命が永遠でないこと、最初から決まっていたんだね。
さようなら、私の愛しい雛菊。
<出品曲誕生秘話>
Girls Talkのイラストを描いたnagmeg氏は、水彩で繊細な表情の女の子を描くイラストレーターさんですが、たまたまイラスト集を手に取って以来その魅力にはまってしまい、今回インスピレーションを得て作曲しました。
雛菊は、時は大正時代、雛菊とその思い人は両思いでしたが、雛菊は親の決めた相手と結婚することが決まっていて、ついに結婚前夜、雛菊は思い人との仲を親に壊されてしまう。雛菊は自分の気持ちを示すためその人に指輪を贈るが、その思い人は実は以前より肺病を患っており、結婚式当日に雛菊をさらいにいこうとした矢先に倒れてしまい、ついに指輪を受け取ることはなかった、という漫画の一節を音にしました。
<最近の主な活動>
本職が予想外に忙しくなり、あまり曲作りができてないのが現状です。nagmeg氏他すてきなイラストを多数みつけてしまいまして、これはすてきなメロディーが生まれてきそうだ、と構想だけは練っています。
<今後の主な活動予定>
作曲の楽譜を出版させていただく予定です。
【 土屋光彦 】
1967年生まれ。十代の頃ピアノを山岡優子に、作曲を三善晃に師事。麻布高等学校、上智大学文学部フランス文学科を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科ピアノ専攻中退。パリ・エコール・ノルマル音楽院にて高等演奏家資格を取得。セニガリア国際音楽コンクール(イタリア)第2位。第16回横浜市招待国際ピアノ演奏会に日本代表として出演。TIAA全日本作曲家コンクールにてこれまでに6回(計8曲)の入賞もしくは入選を果たす。
「Sirènes~セイレーンⅠ・Ⅱ~」 演奏:土屋光彦(ピアノ)
<曲目解説>
セイレーンとはギリシア神話に出て来る半分人間、半分鳥(のちに魚とされた)の怪物であり、海辺の岩上で美しい歌を歌ってその下を通る舟人たちを惑わせて、遭難させたり難破させたりする。2曲ともモーリス・ブランショの言う、その「人間のものではない歌」をテーマとしているが、特に「セイレーンⅡ」の方はその歌が「どこから見ても人間とは異質無縁な、きわめて低い物音」であったと言うブランショの表現にヒントを得ていると言っておこうか。
<出品曲誕生秘話>
私は小学校6年生の時、三善晃サンの「レクイェム」を聴いて、「凄い曲だな」と思ったんです。同じ頃、武満徹サンの「カトレーン」も聴いて、影響を受けました。だけど、その後十代の時にピアノの方が面白くなってしまい、三善先生を少し裏切った形になるかもしれないけれどもピアノの方の進んだのです。
それで当時私は音楽の専門ではない一般大学を受験して合格したんですけれども、入学したての時にそれまでずっと師事していたピアノの山岡優子先生に「ピアノをやるなら早くコンクールを受けなさい」って言われて、突然ポルトガルのポルトー市で開かれた国際音楽コンクールを受けに行ったのです。それで本選に残り、第3メダルと言うのを頂いて本格的にピアノをやる事にしたのです。
けれども40才を過ぎてから、「自分はやっぱり作曲でやり残した事がある」と思い、主にピアノ曲ですけれども作曲を再開して、TIAAの作曲コンクールを受け始めたのです。それで、色々作風の変化があったんですけれども、今日お聴き頂く「セイレーン」、これはチラシには印刷されていないけれども「セイレーンⅠ」と「Ⅱ」と2曲あります。これを書いた時に初めて自分で納得の行く曲が書けたと思ったんです。
この「セイレーンⅠ」の方の弱音のトレモロで始まると言うアイデアは、ここ数年ヴァイオリンの古谷いづみサンと言う方とデュオリサイタルを続けて来ているんですけれども、その練習をしていて、やっぱりそう言う弱音でトレモロを弾く箇所があって、苦労してそこのところを弾いている内に思いついたのです。
<最近の主な活動>
ヴァイオリンの古谷いづみサンと言う方と、毎年リサイタルをルーテル市ヶ谷センターと言うところでやっています。あと、指揮の清水史広サンと言う方の、演技指導まで含めたオペラのワークショップがあって、そこでピアノ伴奏をやっています。
<今後の主な活動予定>
私の若い頃と言うのは三善先生や、武満徹などの有名な作曲家の円熟期で、かなりそう言った人々の作品を聴いて育った訳です。だから最近自分が各曲にもそう言った人々の影響がある程度あると思います。ただ自分としては特に彼らに才能が及ぶと言うような事は考えていなくて、あくまで自分の出来る範囲の事をやりたいと考えているところです。
本コンサートは関東圏から2名、東海圏から2名、台湾から1名の作曲家様にご参加いただきましたが、
台湾の台北駐日經濟文化代表處の謝 長延 代表様より非常に豪華なお花が届きました。
洪 純純 様宛のお花でございますが、主催としましてこの場をお借りして私どもからもお礼をお伝え申し上げます。
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