2017年5月14日(日)第6回神谷玲子ピアノ リサイタル【インタビュー】

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2017年5月14日(日)に日暮里サニーホール・コンサートサロンで
「~音でつづる物語の世界~」と題して、第6回神谷玲子ピアノ リサイタル が開催されます。
 
リサイタルに向けての抱負をインタビューいたしましたので、
神谷玲子さんの演奏を心待ちになさっているファンの方々のためにこのブログを書かせていただきました。
 

神谷玲子:ピアノ
武蔵野音楽大学ピアノ科卒。エッセンフォルクヴァンク芸術大学卒。「エレーナリヒテル国際ピアノコンクール」第3位。「万里の長城杯」第2位。「長江杯」第3位。「アジア国際文化芸術フェスティバル」優秀賞。「全日本クラシック音楽コンサート」優秀賞。「東京ピアノコンクール」審査員賞。ピアノリサイタル、二台ピアノコンサート他、日本ニューフィルハーモニー管弦楽団、TIAA管弦楽団と共演。故デトレフ・クラウス、故小川冨美子、故梅谷明、各氏に師事。太田国際音楽セミナーにて、ウラディミールトロップ、リュドミラー・プルゥーシニク、故イーゴリニコノビッチ、イーゴリレベデフ各氏に師事。
 
 
・今回のリサイタルに向けての抱負を教えてください。
 
2011年5月に第1回を開催させて頂いて以来、毎回目標としてきたことは、前回よりも
少しでもより良いものを、お届けしたいという一心でした。
そして、今回もまた、同じ気持ちで臨もうとしています。今年は6回目となり、自分に
課するハードルがかなり上がってきましたが、気を引き締めて最後まで乗り切ろうと
心に誓っているところです。
 
 
・演奏される曲の聴きどころなどを教えてください。
 
まずは、ご挨拶から、ということで、エルガーの「愛の挨拶}を1曲目にお届けします。
エルガーは、キャロラインという8歳年上の生徒と恋仲となり、めでたく結婚。
この曲は、結婚前に彼女の為に捧げられたものだけあって、大変愛に満ちています。
 
第2曲は、一転して、大変美しいけれど、暗く劇的な音楽が登場します。
ベートーヴェンの弟子のシントラーが、この曲の解釈を訪ねた時、ベートーヴェンは、
シェイクスピアのテンペストを読めと答えたそうで、そこからこの題名がつけられたとのことです
1楽章は悲劇的、幻想的であり、また、めまぐるしくテンポが変わっていきます。
追い求めても決して達成できない悲しみが伝わってきます。
2楽章は、深い内容とあふれる豊かな旋律の緩徐楽章です。この楽章のみ長調で明るい感じが伝わります。1楽章も2楽章もともにアルペジォからはじまり似た様な要素がありますが、1楽章は和音の第1転回形であるのに対し、第2楽章は基本形から始まるので違いが
感じとれます。
3楽章は、ほとんど休むことなく動き回る無窮動な音楽で、始まりの部分は作曲者が霧の中を駆け抜ける騎士の姿から着想をえたのだという逸話がのこっています。最後に熱を帯びた後、霧の中をどこかへ遠ざかって消え去ります。不安や焦りのような感覚が全体に漂います。
 
第3曲目と4曲目は邦人作品をプログラムに取り入れました
「踊子の稽古帰り」は、
橋本国彦の作曲で、画家の鏑木清方の「三枚絵」の原画を見た印象から作曲されました。
昨年の第5回リサイタルの時には、この3曲中の1曲である「雨の道」を弾かせて頂き
ましたが、今年の作品もその三枚絵の中の1曲です。今回は、昨年とまた少し趣の違う曲調で、とてもおきゃんで活発なかわいい女性を想像してお聴き頂きたいと思います。
踊りの稽古を終えて家路につくまで、いろいろなことを楽しんだり、考えたりしながらの帰り道です。どんな出来事が起こるでしょうか。想像するととても楽しくなります。
 
それに続く平井康三郎作曲「幻想曲さくらさくら」は、日本の情緒がたっぷり溢れています。日本人ならどなたでもすぐに受け入れてくださるのではないかと思っています。
 
5曲目6曲目は、お客様からのリクエストを今回のプログラムに入れさせて頂きました。
ショパン作曲、遺作のノクターン嬰ハ短調は、2002年「戦場のピアニスト」の中で印象的に使われて以来、知名度も人気もぐっと上がりました。映画をご覧になられた方も多いことでしょう。1830年ショパン21歳の作品で、祖国を離れウィーンにいた時、祖国ポーランドとロシアが戦争になる気配が漂い始め、心痛な思いで家族にあてて送った手紙と一緒にこの楽譜が同封されていたようです。祖国にいる家族や友人を思う気持ちが痛く伝わってくる美しい作品です。
 
6曲目のリストの「ため息」も、いろいろなところで耳にします。甘美な詩情あふれる1曲です。「ため息」ではありますが、ベートーヴェンのテンペストのような深刻なため息ではありません。どちらかというと少し官能的な感じもします。最近では女子フィギアスケートでも使われていましたし、とても人気のある作品です。
 
最後は、ショパンのバラード3番です。1841年に完成されたサロン風作品です。
このころは、ショパンは、音楽家として絶頂期でしたが、肺の病気で体調がよくない時期でもありました。
この3番はバラード中唯一、基本は長調で書かれているので、幸福感を持つ作品だと思われがちですが、ちょっと違います。
10年前ほど前の1830年(ショパン遺作ノクターン嬰ハ短調が書かれた年)はショパンの祖国ポーランドで武装蜂起がおき、翌31年7月にはワルシャワが陥落しました。ロシア軍による破壊行為で教会さえも砕かれ、信仰さえもままならない状態になりました。そのような中、ポーランドの悲劇を歌い、栄光や憧れを自由に描いたミツキエーヴィッチ(詩人)の
作品は聖典にも近い存在だったようです。
ショパンのバラードは4曲ともこのミツキエーヴィチの詩と関係が深く、この3番は、
「シフィテジャンカ(水の精)」からの着想といわれています。2番は、「シフィテシ湖」が題材であり、2番3番は共通の舞台設定(ベラルーシ共和国西部フロドナ州に実在する湖)から両作は、連作とも考えられます。
2番の「シフィテシ湖」は、敵軍の襲来前、湖にのまれた娘たちが湖畔に花を咲かせる美しい毒草になって復讐を果たす物語で、登場する金髪美女は3番の「シフィテジャンカ」の乙女と同一だといわれます。なお、3番の「シフィテジャンカ」のあらすじは、次のようです。
{シフィテシ湖のほとりに、毎夜若者と娘が現れ語らう。若者は、自分の屋敷でともに暮らそうという。若者は永久の愛を誓うが、娘は、もしその誓いを破れば、必ず報いが訪れるといい、立ち去る。若者が引き返す途中、魅力的な美しさの乙女が湖から現れ、若者を誘惑
する。若者はついに誘惑に負けて、取りつかれたように乙女を追って湖底にまで追いかける。その乙女の手を取った瞬間乙女の姿が、先ほど愛を誓った娘に変わる。逃げようとする若者を波が飲み込み若者は、娘とともに水中に消えていった。}
 
以上のように、今年は、どの曲も物語を多く含んだものとなりました。
聴き手の皆様の想像力も大きく膨らませて頂き、そのお力をお借りしながら私も一緒に楽しめたらと思っています。
 
 
・あなたにとって音楽とは何ですか?
 
これまでずっと、より良い音楽を求めてきましたが、ここまできてみると、(よりよいものを求める気持ちは勿論消えていませんが)、生涯かけてもそう簡単に最高地点に到達できるものではないという事を悟りました。
しかし、もうすでに音楽は自分の生活の一部となっていて、離れることなどはできません。
人は生活の中で起こる様々なことで、喜んだり、落ち込んだり、悲しんだり、楽しんだり、時に怒りを爆発させながら、日々を送っているわけですが、私にとっては、その感情を
抑えてくれるのが音楽という存在です。
いつも無意識のうちに、気分とは反対の曲調を欲してきました。そうして楽譜を開き数分
でもその作品を楽しむことで、いつの間にか、もやもやが少し晴れて気分が楽になっているのです。音楽を精神安定剤や、自然治療薬として使用していることになります。
私はこれからも、音楽とこのように密接に繋がりながら、できるだけ心穏やかに日々を
送りたいと思っています。
 
 

時間: 15:30開演(15:00開場)
 
料金: 全席自由 2,000円
 
出演: 神谷玲子(ピアノ) 石渡真知子(司会)
 
プログラム:
エルガー:「愛の挨拶」 作品12 ホ長調
べートーヴェン:ピアノソナタ第17番 「テンペスト」作品.31-2 全楽章
橋本国彦:踊子の稽古帰り
平井康三郎:幻想曲「さくら さくら」
ショパン:ノクターン 遺作 嬰ハ短調
リスト:“3つの演奏会用練習曲”より「ため息」
ショパン:バラード第3番 作品47 変イ長調
 
 
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