【エッセイ】パリ祭を祝して――田中正子(メゾソプラノ)
2019年7月14日(日)14:00に東京・かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホールにて「TIAAフランス音楽シリーズ vol.12 le Quatorze Juillet~パリ祭を祝して~」を開催いたします。演奏会に向けて田中正子さんにエッセイをご執筆いただきましたので、ご覧ください。
「パリ祭」と聞いて何を思い浮かべるかと言うと、1789年7月14日に起こり、後にフランス革命の発端となった「バスティーユ牢獄」の襲撃である。パリの平民階級の、労働者を中心とした市民が、バスティーユ牢獄に収監されている、反政治思想家を奪還するために起こした反乱とされているが、囚人が少数だったこともあり、もっと他に目的があったと言われている。それは革命のための武器の確保であった。
そして一年後の1790年に行われた全国連盟祭が、パリ祭の起源とされている。フランスの歴史を語るときに、フランス革命は歴史上最も重要な出来事である。
フランスの国歌は「ラ・マルセイエーズ La Marseillaise 」だが、この勇ましいマーチのリズムの歌は、フランス革命歌である。マルセイユの連盟兵(義勇兵)が、隊歌として歌って広めたところから、この題名が付けられたとされる。7番まであり、その歌詞の内容は戦いの士気を高めるもので、敵を罵ったり、残酷な言葉があったりする。
そして、“武器を取れ市民らよ、隊列を組め、進もう進もう!汚れた血が我らの畑の畝を満たすまで”という歌詞とメロディが繰り返し歌われる。
大学時代に上野の旧奏楽堂で、フランス革命歌を中心としたコンサートを行ったことがある。もちろん革命歌や、ラ・マルセイエーズを歌うのも初めてだったが、どの曲も明るく、ダンスが付いた曲もあった。だが曲の内容は、ギロチンの回りを囲んで、喜んで歌い踊る。といったもので、歌い踊りながら、複雑な心境になったのを鮮明に覚えている。
ラ・マルセイエーズの暗譜にも苦労した思い出がある。だが、出演した多くのコンサートの中でも特に印象深い公演になった。
ラ・マルセイエーズが国歌として定着したのは、1795年7月14日に国民公会で歌われた辺りからである。
フランスの国の標語として、良く知られているのは、「自由・平等・友愛」であるが、私はこの言葉が好きだ。フランスの歴史の重さと、フランス人の心意気を感じる。
とは言え、パリを訪れたのはこれまでに一度だが、フランス語を話せないと冷たくされる。というのは誤解であることを身をもって経験した。
ピカソ美術館に行く道を迷っていたら、ステキなマダムが話しかけてくれて、丁寧に道を教えてくれた。北駅近くの(日本だと上野辺り)安いホテルに滞在したが、朝食のバゲットとカフェオレとクロワッサンは絶品だった。日本に帰国する日に、荷物になるので、インスタントの味噌汁と、使い捨てカイロの使い方を、フロントのお兄さんに身ぶり手振りで説明したら、喜んで受け取ってくれた。
ホテル近くの小さなお店で、ガス抜きの水を買った時も、私の片言のフランス語の説明に、気持ち良く、これね!と売ってくれた。と、旅の楽しさは語りきれないが…フランス人の気質は、革命の歴史が培って来たのかなと思うのである。
そろそろ、今回のTIAAフランス音楽シリーズ12のコンサートについて、お話させてもらうと、ちょうど7月14日にホールが取れたこともあり、パリ祭を祝して(記念して)コンサートをしようということになった。プログラムも、平和や祈りが込められた曲、パリのエスプリを感じられる曲、フランス歌曲の名曲、華やかなフランスオペラアリアでプログラム構成を考えた。
ノートルダム大聖堂の火災のこともあり、復活を祈り、また同時にフランスの発展を願うコンサートにしたい。
演奏会情報
2019年7月14日(日)TIAAフランス音楽シリーズ vol.12 le Quatorze Juillet~パリ祭を祝して~
会場: 東京・かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
時間: 14:00開演(13:30開場)
料金: 全席自由 前売3,000円 当日3,500円
出演者
ソプラノ:石井恵子、上村聡子、河内紀恵、佐伯葉子、林志乃、増田貴代子
メゾソプラノ:田中正子
ピアノ:横山歩
曲目
フォーレ作曲:ネル/リディア/祈りをこめて/私たちの愛/「イヴの歌」より 楽園/「レクイエム」より Pie Jesu
グノー作曲:アヴェマリア/オペラ「ミレイユ」より“ヴァンサンを裏切るなんて!私の心は変わらない”
マスネ作曲:オペラ「マノン」より“私が女王のように街を歩けば”
サン・サーンス作曲:オペラ「サムソンとデリラ」より“あなたの声に心は開く”
プーランク作曲:アヴェヴェルムコルプス
他
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