水田梁緒さん(高校3年生部門第1位)第9回東京国際ピアノコンクール入賞者インタビュー

水田梁緒さん(高校3年生部門第1位)第9回東京国際ピアノコンクール入賞者インタビュー

第9回東京国際ピアノコンクール入賞者インタビュー

水田梁緒

水田梁緒 高校3年生部門 第1位

S.ラフマニノフ/ピアノソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36 第1楽章、第3楽章(1931年版)

兵庫県出身。第9回東京国際ピアノコンクール第1位、第12回ジュラ・キシュ国際ピアノコンクール第3位、第32回日本クラシック音楽コンクール第4位、第42回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール第5位、兵庫県学生ピアノコンクールC・D部門金賞・本選奨励賞・県教育長賞、第13回ベーテン音楽コンクール第2位、第18回大阪国際音楽コンクール第3位等、受賞を重ねる。これまでに竹本玲美、加門隆太朗の各氏に師事。現在、兵庫県立小野高等学校3年。今春より大阪音楽大学ピアノ演奏家特別コースに進学予定。

本選演奏動画

Q.入賞されたお気持ちを聞かせてください。

――高校3年生の集大成として出場したコンクールで第1位をいただき、これまで積み重ねてきたことや乗り越えてきたこと、悔しかったことが次々思い出されて、1位と聞いた瞬間は心が震えました。努力したからといってそれが報われるとは限らない世界ですが、自分の表現と技術を高く評価していただけたことに心から感謝しています。また「優勝」は特別なポジションだと思いますので、その自覚を持って進む覚悟を強くしました。

Q.本選での選曲について、選曲理由、作品の聴きどころについてお聞かせください。

――ラフマニノフのソナタ第2番はとても完成度の高いソナタで、構成もメロディも私が一番好きな作品の1つです。高校2年生のとき、東京国際芸術協会様の別のコンクール(全日本ジュニア)で、アタッカで繋がれた第2楽章・第3楽章を演奏してから、自分がステージごとに感じてきた課題を今回のコンクール本選規定15分間内で最大限に生かすために、第1楽章・第3楽章のb-moll /B-dur同主調で構成しました。全日本からのストーリーが完結する場でしたので、作品とラフマニノフという作曲家に純粋に向き合うことを今回のテーマにしました。

特にクライマックスの第3楽章は「想い」が凝縮されていて、パッション、残酷さ、祈り、希望など、複雑な心理状態を表現しています。ラフマニノフの内面を重ねて、見ている景色を再現しながら演奏しました。

水田梁緒
演奏風景

Q.より良い音楽、演奏のために普段から心がけていること・練習以外に音楽と向き合うためにしていることはありますか。

――4つの側面からアプローチしています。

1つは「音楽をするための技術」を培うこと、つまり練習です。ツェルニーやバッハ作品の基礎練は必須で、またステージにのせるような仕上がった曲でもインテンポでゆっくり弾いてみたり、リズム練習をしたり、毎日6時間以上はピアノに向き合います。

2つめは「分析」です。曲の解釈、構成アナリーゼ、またタッチの研究は大好きな分野で、音色を豊かにするためにいろいろな角度の打鍵を試しています。先生によくアドバイスされることですが、楽譜を本番前まで眺めることも大事だと思います。俯瞰して見るとその瞬間に見えてくるものもあって、作曲家がくれるメッセージをキャッチするタイミングを逃さないようにしています。

3つめは、クラシック以外のジャンルも弾くことです。これは「弾きたいから弾く」という方が的確かもしれません。清塚信也さんの曲や、TVドラマで流れてくる挿入歌を、即興で伴奏づけして弾いたりします。コンクールではテクニカルな作品で臨むこと多いですが、こういったシンプルに曲に身を委ねる瞬間に、音楽の本質に迫ることもでき、自分のスキルも広がります。

4つめは音楽以外のことも楽しむことです。私は野球やスポーツが好きなので、試合を見たり、2人の弟達と公園で野球遊びをすることがリフレッシュになっています。たった一瞬で最大限のパフォーマンスをする点では、スポーツもピアノも同じで、本番のインスピレーションに繋がることも多いです。

また、自然豊かな環境に暮らしているので、散歩をしながら四季の山並みを見て、小鳥のさえずり、小川のせせらぎなどを肌で感じ、五感を通して心身のバランスを整えるように心がけています。

Q.最近のマイブームは何ですか。

――譜読みです。弾きたい曲が溢れ過ぎて、進路も決まったので、大学合格後は弾きたかった曲を次々さらっています。ショパンのエチュードやソナタ、スケルツォやワルツ、それからリスト、ヘンデル、ハイドンの作品、またコンチェルトといった大曲の譜読みをどんどん進めています。自由に音楽ができる贅沢な時間です。 いつも多彩なコンクールや育成プログラムをご提供していただき心より感謝申し上げます。押し上げる力をいただき、成長する自分を感じています。大学はピアノ演奏家特別コースに進みますので、表現できる曲を増やして、階段を昇りながらまたチャレンジします。