中村詞文さん(ミュージカル部門プロフェッショナルの部第1位)第2回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

中村詞文さん(ミュージカル部門プロフェッショナルの部第1位)第2回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

第2回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

中村詞文 ミュージカル部門プロフェッショナルの部 第1位

L.バーンスタイン/「キャンディード」より 人生とはこんなもの/英語 C.M.シェーンベルク/「ミス・サイゴン」より 神よ何故?/日本語

武蔵野音楽大学大学院修了。卒業後、音楽座ミュージカルに入団。退団後もオペラ、ミュージカルの舞台、映像メディアに多数出演。年間数十本のコンサートや複数回の海外演奏旅行に参加。「キングレコード」よりメジャーデビュー経験あり。この度、第2回東京国際管弦声楽コンクールにてミュージカルプロフェッショナル部門の第1位、及び東京新聞賞を受賞。TikTok歌配信ライバーとしても活躍中。東京国際芸術協会演奏家会員。

Q.入賞されたお気持ちを聞かせてください。

――何か1つでも誇れるものを作りたいと参加したので、素直に嬉しいです。ですが喜んでばかりではいられません。正直なところ、もう音楽をやめようと考える事が度々あります。自分の実力や努力の限界を感じつつ、「それでもやっぱり」と奮い立たせながら続けてきました。本番はもちろん緊張しましたし、まだまだ粗が目立つ演奏でしたが、今回このような名誉ある賞をいただけた事にとても嬉しい思いもあり、気が引き締まる思いでもあります。いただこの賞に恥じないよう、そして多くの方の心を掴める表現者になれるよう、今後も驕る事なく精進したいと考えています。

Q.本選での選曲について、選曲理由、作品の聴きどころについてお聞かせください。

――選曲が1番重要と考えていたので、慎重に選びました。今回コンクールでは、マイクを使わず生声なので、音域が高めで跳躍が少ない声が埋もれにくい曲、その上で自分の声質、ホールの大きさ、表現をアピールできる曲かどうか‥。多くの条件を踏まえて自分のレパートリーから選択するのは苦労しました。
これらの曲の聴きどころは、やはり生声でも届くエネルギーだと思っています。各キャラクターの熱い思いが詰まっていて、かつ、ドラマの展開が見える曲なので、その曲が持つパワーに負けないようエネルギッシュに演奏しました。

Q.より良い音楽、演奏のために普段から心がけていることはありますか。

――多くの演奏、演技、舞台に普段から触れるよう心がけています。良いものを良いと判断するためにはまず、可能な限りたくさんのものを、できれば録音、録画だけでなく、肌で感じられるような生のパフォーマンスに触れ、そのセンスを獲得すべきだと感じています。往年のものから最先端のもの、自国のものに世界のもの、トップレベルのものや、身近な方のもの‥。体験、体感がセンスを作り出すものだと考えています。

Q.思い出のレッスンはありますか。

――先生と心から全力でぶつかったレッスンは思い出深いものでした。当時、僕は先生に遠慮し、聞きたいこと、言いたいことを伝えることができずにいました。つまりは受動的な受け身レッスンばかり行っており、実力も伸び悩んでいました。ある日決心して思いを伝えたところ、それに先生は応えてくださり、より有意義なレッスンを受けられたと感じました。生徒のポテンシャルや指導者の力量だけでなく、双方のコミュニケーションが取れているペアこそ、上達が早いのではないかと思います。元々の相性に胡座をかかず、積極的にコミュニケーションをとることによって、より能動的で有意義なレッスンになるものだと気づけた思い出のレッスンです。

Q.練習以外に音楽と向き合うためにしていることがあれば教えてください。

――英会話レッスンや筋トレ、ストレッチにダンスを音楽活動の幅が広がるように行なっています。英会話は、ライブ配信の際に国外のリスナーと会話できるように、音声学的にも英語の曲を発音ポジションよく歌えるようにと学んでいます。筋トレ、ストレッチは、体が楽器ということもありますが、舞台映えのするよう、さらには自分の商品価値や魅力を底上げし、多くの人の目に止まれるよう取り組んでいます。ダンスは主にジャズダンス、時にバレエを学んでいます。ミュージカルには必須ですし、立ち姿、所作にも反映できるものだと実感しています。

Q.最近のマイブームは何ですか。

――ジャズミュージックに挑戦しています。かつて音楽界を席巻しており、今こそジャズ人口は少ないかもしれませんが、現代音楽、とりわけ洋楽やミュージカルソングにも色濃く要素を引き継いでいると思います。発声はもとより、フェイクやアレンジを自由に加えたり、ブルーノートやしゃくりにフォール等、僕の思う「かっこいい」がジャズには散りばめられています。少しでもそれに近づけるように、さらには弾き語りで歌えるようにと、ジャズピアノを学んでいます。

Q.今後の意気込みをお聞かせください。

――入賞は到達点ではなく通過点だと強く感じています。まだまだ発展途上と自覚していますので、目標でもある「何でも歌える」を目指して多くのジャンルや曲に挑戦していきたいです。新たなジャンルに挑戦する度に、今まで学んできたものが弊害となる場面に出くわします。謙虚な姿勢で一から学び始めて初めてスタートラインに立てると思っています。コンクールに参加し終えた今、まさにそんな気持ちでリスタートを切れたらいいなと考えています。今後益々発展していくであろう本コンクールの初期優勝者の名に負けぬよう、さらには華を添えられるように、諦めずに表現活動を続けていきたいです。