夏目有希子さん(声楽部門マスターズG女声の部第1位)第2回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

夏目有希子さん(声楽部門マスターズG女声の部第1位)第2回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

第2回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

夏目有希子 声楽部門マスターズG女声の部 第1位

F.プーランク/「ティレジアスの乳房」より いいえ ご亭主様/テレーズ役

4歳からピアノ、16歳から声楽を始める。
第25回、27回、29回日本クラシック音楽コンクール地区本選優秀賞。
第12回東京国際声楽コンクール 声楽愛好者A部門 第1位。
第2回東京国際管弦声楽コンクール 声楽部門マスターズG女声 第1位。
現在、宮部小牧女史に師事。

Q.本選での選曲について、選曲理由、作品の聴きどころについてお聞かせください。

――プーランクのオペラ「ティレジアスの乳房」のテレーズのアリア“Non Monsieur mon mari(いいえ、ご主人様)”は、早口言葉のような膨大なフランス語の歌詞と、現代音楽ならではの一筋縄ではいかない和声が特徴の難曲ですが、自分の声に合っていて歌いやすかったことと、奇想天外なストーリーと主婦テレーズのエネルギーに魅力を感じ、選曲致しました。
 曲の聞きどころは、目まぐるしく曲が展開していくところです。亭主関白で傍若無人な夫に怒り狂って登場する妻テレーズが、前半はスリリングなリズムに乗り、丁々発止で夫とやりとりします。曲の後半には、テレーズの乳房が外れ、乳房が大空を自由に舞う優雅なワルツから、勇猛果敢なボレロのリズムへと変化して、最後に髭の生えたテレーズの絶叫で終わる、エキセントリックなアリアです。

Q.より良い音楽、演奏のために普段から心がけていることはありますか。

――声楽は体が楽器と言いますが、年齢を重ねる毎に衰えていく筋力の維持が大きな課題です。
若い頃から筋力が弱く、歌うための正しい呼吸を行うことすら難しい体で、今でも苦労をしていますが、年齢を重ねてより一層、良い姿勢を保つ努力と、しなやかな筋肉を鍛える日々の努力が必須となってきました。
ウォーキングやストレッチ、スクワット、インナーマッスルを鍛えるトレーニングを、家事や移動中など、普段の生活の中で常に行うように心がけています。

Q.練習以外に音楽と向き合うためにしていることがあれば教えてください。

――私は音楽の他に、花も料理も大好きで、これまで様々なことを学んで参りましたが、全ての「道」は必ず繋がっていると感じています。声楽は体が資本ですので、毎日の食生活で体調を整えることが必須ですが、日々のわずかな体調変化に応じて、薬膳の思想を取り入れた手料理を毎日心がけています。また、花を探して四季折々に自然の中を歩き、草木花や小さな生き物たちの営みを愛で、川のせせらぎや風の音、葉のざわめき、鳥の声、虫の音など、自然界の音に耳を傾け、自然界の中に小さな美しさを見つけて感動することも、音楽と相互的に良い影響を与えてくれていると感じます。曲の中に散りばめられている自然界の美しい情景が、自分の中に確固とした具体的な経験として蓄積されていることは、曲を演奏する上で大きな助けとなってくれています。

Q.最近のマイブームは何ですか。

――マイブームは、コロナ禍を機に約30年ぶりに再開したピアノ曲の練習です。
声楽は練習し過ぎると声帯を痛める危険性があるため、練習時間を敢えて制限しますが、ピアノは一音、一音、理想の音を出すために地道な練習が必須ですので、つい夢中で長時間練習してしまい、肩凝りで歌の練習に支障をきたすのが目下の悩みです。
しかしながら、ピアノは脳トレも兼ねて、一生、練習を続けたいと思っております。

Q.今後の意気込みをお聞かせください。

――今回、初めてマスターズG女声部門に参加をさせて頂き、積極的に挑戦され続ける人生の大先輩方が全国に大勢いらっしゃる事に刺激と感銘を受けました。人生100年時代、これから先の半生、年齢は気にせず(笑)何事にも前向きに取り組み、努力をして参りたいと思っております。