【インタビュー】2025年1月25日(土)篠村友輝哉ピアノリサイタル

【インタビュー】2025年1月25日(土)篠村友輝哉ピアノリサイタル

2025年1月25日(土)に東京・日暮里サニーホールコンサートサロンで「篠村友輝哉ピアノリサイタル」を開催いたします。リサイタルに向けて篠村友輝哉さんにインタビューいたしましたので、ご覧ください。

インタビュー

今回のリサイタルに向けての抱負を教えてください。

今回のプログラムはシューベルトの大作、ソナタ第18番「幻想」の1曲ですので、とにかく、このシューベルトの静謐な時間に少しでも深く浸っていただけるよう努めたいと思っています。
シューベルトは私の音楽観、芸術観の形成に深い影響を与えている作曲家です。彼の音楽には、その声を聴いているのはこちらなのに、逆にこちらの痛みを聴いてくれているように感じるほどの慎ましい優しさがあります。決して何かを声高に主張しない、耳を傾ける者だけに聴き取れるようなその声の出し方と、そこに同時に刻まれている深甚な孤独、そしてそこから目を逸らさない厳しさ。そういった音楽の在り方に共感し、また、ずっと憧れ続けています。
これまでにも最後のソナタ第21番など、節目節目で彼の大作に取り組んできましたので、いま自分が30歳という節目の年齢であるうちに、10年以上「いつか」と思い続けていたこの大曲「幻想」ソナタを演奏したいという思いがあったのです。

演奏する曲の聴き所などを教えてください。

シューベルトの作品は、Moderatoのテンポ感とPianissimoの声色を基調としていますが、この「幻想」ソナタはなかでもその特質が全面に表れているソナタではないかと思います。
これは「幻想」という名称の由来でもあると思うのですが、この作品はソナタでありながら、主題やモチーフを組み立てて構築物を打ち立てるというよりも、モチーフの繰り返しや連打、反復といった手法によって、ある時間の持続というものが目指されているように思えます。音楽は時間によってある空間を創出するものでもありますが、彼の尊敬していたベートーヴェンが上に積み上げて空間を構築したのに対し、シューベルトは時間を横に広げていくことで空間を生み出す感じです。第1楽章の主要主題に象徴されるように、非常に静謐で、柔らかく慎ましい光のとばりのなかで、終わりのないような長くゆったりとした時が流れていく。そこには実際の静けさ以上の静けさが満ちており、身を置いていると、何か、自分のなかの優しさが引き出されてゆき、自分自身の孤独や痛みと向き合わせてくれるような感覚があります。
また、全編にわたって舞踊性が聴き取れるのも、このソナタの大きな特徴です。ただそれは、完全に舞踊そのものというより、心の舞踊だと私は受け止めています。そして、シューベルトらしい半音の揺れによって光と陰を行き来する心の微細な動きも、随所に聴くことができます。

あなたにとって音楽とは何ですか。

最後には、自分はここにいていいのだと思わせてくれる「場所」。でもそれは、それだけ強大で、ともすると危険ですらある「力」が音楽にはあるということです。ですから、本当にていねいに扱わなければならないし、自分を受け止めてくれるものだからこそ、そのことに甘えず、大切に向き合わなければならないと思わせられるものでもあります。

演奏会情報

2025年1月25日(土)篠村友輝哉ピアノリサイタル
会場:東京・日暮里サニーホールコンサートサロン
時間:14:00開演(13:30開場)
料金: 全席自由 2,500円

出演者

篠村友輝哉
Yukiya Shinomura, ピアノ

桐朋学園大学卒業、同大学大学院修士課程修了。在学中、複数の選抜演奏会に出演するほか、桐朋ピアノコンペティション第3位、東京ピアノコンクール優秀伴奏者賞、かさま音楽賞などを受賞。演奏会では演目全体を通じてひとつの世界を表現する独創的なプログラムに定評があり、2024年8月には「生の灯りを点す」と題したショパン・プログラムによるコンサートを開く。また、2023年12月には東京で行われた二胡奏者で作曲家の濱島祐貴氏の二胡リサイタルにて共演を務め、好評を博した。専門のピアノ音楽を中心に幅広いジャンルの音楽について散文を執筆。芸術の魅力や可能性を言葉を通じて思考、表現する試みを行っている。文学や映画など音楽以外の分野も探求し、それらについてさまざまな場で積極的に言及している。
(公式サイト) https://yukiya-shinomura.amebaownd.com/

曲目

シューベルト:
ピアノ・ソナタ 第18番 ト長調 D894 作品78 「幻想」

第1楽章 モルト・モデラート・エ・カンタービレ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 メヌエット:アレグロ・モデラート
第4楽章 アレグレット