第29回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール審査員所感Message from judges
全日本ジュニアクラシック音楽コンクールの審査に携わって下さった先生方から、御担当いただいた予選・本選・全国大会について総評をお寄せいただきました。今後コンクールに御応募を予定していらっしゃる親御様、御本人、また生徒の参加を予定していらっしゃる先生方への貴重なメッセージとなっております。
※先生からのメッセージの一部を抜粋して掲載しています。
全国大会 太田幸子 先生 東邦音楽大学特任教授
今年は例年になく肌寒さが感じられる全国大会になりました。第29回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール全国大会、高校生の部8月29日(土)、中学生の部9月13日(日)に小松川さくらホールに於いて開催されました。多数の生徒さん達にご参加を頂きまして、音楽性豊かに情熱ある演奏が繰り広げられ、参加された皆様は日頃より充分練習されている成果が表れておりました。中学生の部、高校生の部でありながら、大学生かと思われるテクニックと感性豊かな表現力で完成度の高い演奏もございました。回を重ねるごとにレベルの高さを実感しております。今後皆様がピアノを学ぶ上で是非勉強して欲しいことは、時代様式、音楽様式です。大きく四期に分けられています。バロック期、古典期、ロマン期、近代・現代です。特にバロック期、古典期に於いては楽器の変遷が大事になり、正しく弾くためにその時代の楽器の知識が必要です。音楽の神髄とも言えるバロック期の作曲家は、クープラン、ラモー、ヘンデル、バッハ、スカルラッティ等です。バロック期の楽器は、ハープシコード(チェンバロ)です。同じ鍵盤楽器でも現代のピアノとは構造が違い、ハープシコードにはダンパーペダルがありません。ですから現代のピアノでペダルを使いすぎることはバロック期の表現にならないことになります。又ダンパーペダルがないのでレガート奏法は出来ず、ノン・レガートになるのです。バロック期の作品を現代の完成されたピアノで演奏するわけですから、知識として持っていると楽譜が自然に読めてきます。又この時代は装飾音符が多いことも挙げられますが、装飾音符の弾き方として、トリル、モルデントの最初の音が拍の前に出ない様に、必ず拍の頭で合わせて下さい。バロック期の曲を現代の完成されたピアノで弾く時、その時代の楽器を知ることが大事ということが、よく理解されたことと思います。皆様の更に向上された演奏を聞かせて頂きたいと思っています。最後になりましたが、コンクール開催にあたりご尽力頂きました東京国際芸術協会のスタッフの皆様に心より厚く御礼申し上げます。
全国大会 益田みどり 先生 日本弦楽指導者協会関東支部理事、ダイナーズカルチャー講師
第29回全日本ジュニアクラシック音楽コンクールも素晴らしい力演を拝聴する事ができました。猛暑の中沢山の練習をなさり頑張られたのでしょう。皆様感動の演奏でした。全国大会でしたので遠方からいらして下さった方もいらして本当に御苦労様でした。多少地域差がある感は致しました。要項に受賞者の曲目も出てますので御参考になさり御指導くださっている先生と選曲なされますとよろしいかと思います。曲も自由曲ですので難易度にかなり違いがある場合もあり、出演者も全国大会にいらしてびっくりなんて事もおありになったのではないでしょうか。しかしながら、いずれにしても全国大会にいらっしゃるという事は御本人の努力もそうですが、御家族の支え、素晴らしい先生方の御指導あっての事です。感謝ですね。これからも鍛練なさって素敵な音楽奏でてください。心より応援いたしております。
全国大会 菅野雅紀 先生 東京藝術大学講師、武蔵野音楽大学講師
全日本ジュニアクラシック音楽コンクール全国大会、大学生の部を審査させていただきました。出場された皆さんは、予選、地区本選で優秀な成績をおさめた皆さんだけに、テクニックや音楽性など、個性光る粒ぞろいの演奏で、大変楽しく審査させていただきました。全体を通して皆さんにお伝えしたい事のひとつは、楽譜をよく読み、幅広い勉強を心がけてほしいということです。楽譜に書かれた一つ一つの音符、休符、記号は、作曲家が心を込めてペンを走らせたもので、作曲家の思いを知るために最も重要なメッセージです。楽譜を正確に読み、そこに込められた意味を読み解いていくことを忘れないようにしてほしいと思います。また、演奏する曲だけでなく、その作品に関連する様々な音楽作品、美術作品、文学作品にも目を向けることで、作品に対する理解はさらに深まることと思います。大学生ということもあり、技巧的にとてもハイレベルな演奏が多くありましたが、速く弾くことや強い音を出すことに集中しすぎてしまっている演奏が少なくありませんでした。ゆっくりとした部分では、とても音楽的に表情豊かに演奏できているのに、速いパッセージになると弾き飛ばしてしまう、ということもよく見受けられました。難しいパッセージを見事に弾きこなすだけでなく、そこに音楽の表現を盛り込むことを心がけてほしいと感じました。ハイレベルな演奏ばかりではありましたが、第1位、第2位が該当なしという結果について、私自身は、これらすべてを兼ね備えた演奏がなかったためと思っております。同時に、この結果は皆さんに益々の成長を期待する審査員からのエールでもあります。演奏に磨きをかけて、また素晴らしい成長の成果を聴かせていただけることを楽しみにしております。
東京Ⅱ本選 水谷志保美 先生 水谷音楽教室主宰
全体的に選曲に対して、各自、弾き込みが不足していたように感じました。学校行事等と重なってしまい忙しい時期、という時もあります。計画的に取り組んでいても思う様に練習が出来ない時もあります。焦りから練習しても空回りすることもあります。様々な現状を受け入れて、曲を練り上げ、自分自身の個の表現を達成させることは大変ですね。物理的な要因を加味した上での選曲も重要になってきます。現状で弾き込める選曲をする、ということで、時間を捻出することも一案でしょう。弾き込むことで見えてくるもの、感じてくるもの、開花してくることが多々あります。体で音楽を感じ、表現するためには、弾き込みは大切な要素の一つです。また、メンタルにも左右してきます。弾き込むことで自信や達成感、充実感を持つことが出来ます。不安要素が減少していくことで、気持ちが安定します。緊張しても舞い上がってしまうことが少なくなります。不安を抱いたまま演奏をすると、その不安感が音として伝わってきてしまいます。表現力が減退してしまいます。弾き込みが不足している時は、楽譜をしっかり読み取り、そこからの情報をしっかり消化吸収し、いかに表現するかを構築していくことが必要になってきます。先生方のお力添えの下、現時点でできる最高の表現を目指していく姿勢も大切です。コンクールに出場する目的は様々だと思います。受賞を目指す人、腕試しの人、周囲に勧められなんとなくの人、単純に出場することに意義がある人、等々。しかし、いかなる場合でも、本番に自分自身のベストの演奏が出来る様に、切磋琢磨、努力をすることは必要不可欠であり、最も大切な姿勢の一つです。諦めないで、直前まで、多感に努力をして欲しいです。そうできる環境設定もまた重要だと思いました。
東京Ⅱ本選 菅野雅紀 先生 東京藝術大学講師、武蔵野音楽大学講師
全日本ジュニアクラシック音楽コンクール東京本選に出場された皆さま、大変お疲れ様でした。音楽を通して、なにかを表現しようという気持ちがあふれた演奏がとても多く、とても楽しく審査をさせていただきました。中学・高校・大学と審査させていただきましたが、高校・大学は全国大会でも聴かせていただきますので、そちらに譲ることとして、中学部門について。全体にとてもハイレベルで、国内トップレベルのジュニアが集っていると感じました。これからがとても楽しみです。是非、ライバルの演奏もたくさん聴いて、切磋琢磨してほしいと感じました。全体を通して感じたこととして、選曲の難しさ、があります。レベルの高い、難しい曲に挑戦することで成長できることも多くあると思いますが、時には、身の丈にあった選曲をして、音楽の表現を深めるという勉強も必要です。コンクールの本番までに十分に弾きこなせないで終わってしまうこともあると思います。プロの演奏家になっても長年引き続けることができる名曲ばかりですので、コンクールで終わりではなく、これからもさらに勉強をつづけていただきたいと思います。コンクールという性質上、その場の演奏に点数を付けて評価することになってしまいます。今回、思うような成績でなかった皆さんには、次回、さらに上の成績を目指すチャンスがあります。今回よりいい演奏ができるよう頑張って、またすてきなピアノを聴かせていただけることを楽しみにしております。
岡山本選 土居里江 先生 くらしき作陽大学 准教授
2015年8月11日(火)、岡山県倉敷市玉島文化センター・ホールで開催された地区本選の審査を担当させていただきました。例年よりも出場者数が増え、特にピアノ部門の参加は多く、熱心に音楽を勉強されている方々の層の厚さを感じました。この会場は客席数の多い大きなホールで、舞台も広く設定されてありますが、毎回、コンクールにチャレンジされている方は特に、大きな舞台に立つことの経験が積みかねられている様子で、ステージマナーも良く、堂々と伸びやかに演奏されている方が多かったように思います。また、皆さん真摯に音楽に向かわれている様子で、表現に様々な工夫がみられ、楽しく演奏を聴かせていただきました。年々、コンクール出場者のレベルが上がり、上手に演奏される方が多くなる中、審査をしていて印象に残る演奏というのは、その演奏者の個性が強く表れた演奏のように思います。奇抜さを狙うという意味ではなく、一人として同じ人間がいない、唯一の存在である演奏者の心から湧き上った表現を聴くことができた時に、「もう一度、この人の演奏を聴きたいな。」と、強い印象を受けるのだと思います。それは、プロの演奏家の演奏に限らず、まだ発展途上の若いコンクール参加者の方々にも言えることだと思います。ぜひ、これからのステージで、若い皆さんの瑞々しい感性と共に、心からの主張を、音楽を通して伸びやかに表現してくださることを期待しています。
大阪Ⅱ本選 中村真理 先生 むさしの音楽院 代表
今回のコンクールでは小学生以下の参加者のテクニカルな部分に関しては若干のスキルアップを感じました。いつも同じことを思いますのは、選曲のことです。頑張る=賞をとる…このことにあまりこだわり過ぎると、大人の感性を必要とする曲を幼い子供が演奏することにもなりかねません。テクニックを持っている子供には、指導者にすればより難しい曲を与えたくなるのかも知れません。しかし難しいものはこの先いくらでもやらなければならない時が来ます。子供の感性を十分考慮し、活かせる選曲をしたいものだと私は常々思っています。一番目に先ずは基本練習を小さい子供さん達には特に望みます。中高生以上の参加者にも同じことが言えると思います。どう考えても、この方の技術では部分的には無理なところがあるな…と感じてしまう選曲がありました。技術が伴わないのに難曲に挑戦するのも考えものかも知れません。ただ音楽的には、全般的に唄えていたり表現力が増してきていたり…と参加者のレベルが若干底上げされてきているように感じました。しかしながら、そうであるならばなお更参加者の選曲が大事なのではないだろうか…と。背伸びし過ぎない方がいいのではないかと思いました。結果的には全体に特にレベルの低い演奏はなく、底上げされている感を持ちました。
東京Ⅲ予選 水谷志保美 先生 水谷音楽教室 主宰
選曲は概ね各々のレベルに相応し、各自丁寧に演奏し、音楽性・技術ともに上昇してきていると思います。華やかさがありコンクール用に聴き映えのする曲という選曲も選択肢の1つです。一方、演奏者の個性を活かせる曲や実直に学習できる曲は自信や実力を培い、個を伸ばすことに確実に繋がっていきます。どちらも大切なことです。今回出場された方々は、緊張と戦いながらも、皆さん、伸びやかな演奏であり、音楽を楽しまれていたと思います。一つ一つの経験がまた新たな音楽性を生み出してくれることでしょう。皆さんの演奏を通して一番感じたことは、楽譜をしっかり読み取ることの大切さです。作曲者は意図的に音符や休符の長さを決めています。まずはテンポや曲想を含め、それらを正確に再現することが原曲を体感する一歩です。楽譜の中にあるメッセージをいかに読み取り、どう表現するか、またどう表現したいのか、を探究していくことはとてつもなく奥が深いのですが、その過程もまた面白くもあり興味深いものがあります。どんなに短い曲でもその深さはあります。時代背景やその時代の楽器の響きや仕組みを知ることも音色や表現を考えていく上では重要なことです。作曲者の目指していたことを自分なりに理解した上で、どのように表現しようか、どのように演奏しようか、と考えて、表現につなげていくことが大切だと思いました。楽譜に書いてある音や強弱、CDで聴いた曲の雰囲気、先生方のご指示等を基した演奏も学習過程では勿論大切です。その上に、聴く人の心に残る自己表現というものが欲しいのです。それぞれの思いが伝わってくる心豊かな熱い演奏が出来たら更に、音楽の世界は広がり、それはとても魅力的でステキな世界だと思います。
東京Ⅱ予選 鈴木舞 先生 鈴木ヴァイオリン教室 主宰
今回気付いた事は、音楽面では自分の内面や感情の世界を聴衆に伝えるには、やはり自分自身がこういう事を伝えたい、という明確なものがなくてはなかなか伝わりにくいという事でしょうか。普段からたくさんいろいろな音楽を聴いたり、先生と相談をしたりして、自分の中の感じた事や曲のイメージを構築して行き、高めていく事が必要だと感じました。また、技術面に関しては曲として聴かせるレベルにまで引き上げるにはやはり音程とリズムが肝心だと思いました。日々の練習では自分の音をよく聴き、自己鍛錬に励んで頑張ってもらいたいと思います。
東京Ⅱ予選 三崎今日子 先生 愛知県立芸術大学 講師、二期会 会員
沢山の可能性を秘めた若い人達に点数をつけてゆくことは審査する側の苦悩も多い。特に声楽の場合には、声の成熟する年齢が高いため、各々の年齢層によって評価もかわるであろう。したがって、中高生はもちろん、大学生でも声はまだ成長過程にあり、今回の予選受験者は皆さんその声の資質は良いものを持っておられると思った。となるとジュニア部門の評価においては無理のない発声かどうか、音程と読譜の正確さとなるが、忘れてならないのが発語の明確さである。シラブル単位では無く言葉としてきこえるかどうか…、若い学生達にとって、音楽の深さと技術はこれから先の長い課題としても、語感のセンスを磨くことは若いうちから身につけてゆくべきことではないかと感じる。今回、言葉が美しく丁寧であった演奏者は、音程、譜の正確さ、発声ともに高い評価であったことを思うと、学生の皆さんには美しい声とともに美しい言葉にも目を向け、磨いていっていただきたい。
東京Ⅱ予選 安陪恵美子 先生 上野学園大学・短期大学部 講師
①お子様の技術レベルについて:中学生から、大学生までを審査させて頂きました。皆さん、コンクールに向けて良く勉強されていると感じました。皆さんレベルがとても高く、甲乙つけがたい僅差だったと思います。②お子様の音楽レベルについて:リズム、音程、曲の表現力も、良く勉強されており、とても素晴らしい演奏でした。③お子様たちに向けて、今後の学習についてのアドバイス:ビブラートをかけ過ぎていらした方がいらっしゃいました。なるべく、無理せず、自然に歌われた方が、音楽が重くならず歌いやすくなると思います。
東京Ⅰ予選 根元知世 先生 根元音楽教室 主宰、ヤマハ システム講師、ヤマハ音楽院 講師
すべての部門を通し、皆さん、良い緊張感と集中力を持って演奏して下さいました。自由曲の審査になりますので、選曲も大事なポイントとなります。その生徒さんの持ち味を存分に発揮出来る楽曲が1番だと思います。今回、技術的にも音楽的にも難曲を選ばれるケースが少なからず見られました。技術面で何とか演奏出来ても、音楽面でまだ理解しきれない事は残念でした。コンクールを受ける目的が、個々にあると思いますので一概には言えませんが、曲の難易度が必ずしも評価につながる訳では有りませんので、その辺りも指導者と共に考えてみて下さい。演奏については、日頃の練習でも程よい緊張感を持って演奏することを心がけましょう。また、ホールでの響きを想像して演奏する事も大切だと思いました。特に、ホールでの演奏経験が少ない生徒さんは、小さくても響く音、大きくても遠くまで響かない音がありますから、実際、音楽会などに足を運んで、耳で捉えていきましょう。そして最後に、結果を気にせず、その曲を通して十分に表現して下さい。音楽を楽しみながら表現する事で、聴いている人々を感動させ、つまりは評価もついて来るのです。未来の音楽家の皆さんが、今後も良い指導者の下、研鑽を積まれ、また素晴らしい演奏を聴かせて下さる事を楽しみにしております。
福島予選 青木由貴子 先生 ミュージックアズム福島 ピアノ講師、ヤマハピアノコンサートグレードアドバイザー
コンクールに出場するということは、自分のペースで練習することはと違い、決まった日にちに向けて仕上げ、大勢の前で演奏し、公然と評価を受けることです。これは大人になっても本当に難しいことだと思います。このジュニアクラシックコンクールは幅広い年齢層と様々な学習進度に対応できる、貴重な機会を与えていただけるコンクールだと感じました。今回の福島予選では皆さん、しっかり弾きこみ、歌い込み、演奏家として立派に聴かせてくださいました。中には、自分の世界観を持った演奏をされるかたもいらっしゃり、感心して聴かせていただきました。コンクールの選曲といえば、音の数が多い曲、音量の強い曲、テンポの速い曲に挑戦することも多いと思います。成長著しいジュニアの皆さんは、テクニックの高さを磨くことは勿論大切です。その前に美しい音色を追求し、丁寧にフレーズを歌い込み、楽譜に書かれた音符の裏側にどんな音楽が背景としてあるか読み取ることが演奏の裏付けになるといいなと思いました。そしてそれが後に音楽の個性につながってくるのではないでしょうか。出演された皆さんのますますのご活躍と成長をお祈りいたします。
福島予選 深瀬幸一 先生 福島県立橘高等学校 教諭、管弦楽部顧問
いずれの子どもしっかりと練習したことがうかがわれる演奏であった。小学生でも、明快な音で自分の音楽を演奏していた子どもがいた。小学生高学年から上の年代は、それ相応の技術を要する曲を演奏をしていた。非常に難しい曲を破綻なく演奏する子どもが数多くいた。問題はそこからで、技術的な難度が上がるとその技術をクリアすることが目的となってしまい、「音楽」がおろそかになってはいまいか。「表現」とは、英語で言うと「中身をつぶして外に出す」ということに由来するらしい。そこに音があっても「表現」がないという演奏にならないようにしなければならない。自分がその曲をどう感じそれをどう音で表すのか?そういう意識が、難しい曲であればあるほどおろそかになってはいまいか。先生の指導と自分の努力によって難しいパッセージが弾けるようになるのはすばらしい事だけれど、それだけでは人の心を打たない。たとえミスタッチをしてもいいと思う。そこに「表現」があることのほうが重要だと思う。
神奈川Ⅲ予選 吉川弘子 先生 和田町音楽院 講師
最初のキッズ部門、まだ小さいのに、舞台上に堂々と出て挨拶もしっかりとしていました。緊張はしている様子でしたが、演奏もレッスンしてきた事や先生にいただいたアドバイスを今回の予選の演奏で活かして丁寧に弾いていると思いました。次の小学生部門、緊張から演奏が止まってしまう子もいましたが、すぐに立ち直って先を弾き始めていたので良かったと思いました。小学生低学年部門は今回2年生の子がいなかったからか、3年生2人のレベルが高い印象を受けました。高学年部門でも選曲がやはり良いと思いました。きっと先生と相談して決める時「この曲なら、自分はやれる!がんばれる!!」っと思う曲を選ぶのでは、と思いました。次の中学生部門、なかなか学校の勉強も難しくなりピアノだけに時間をあてる事ができない時期で、大変な中コンクールと言う目標に向かって頑張って練習してきた成果を出しているなと思う方と、緊張からなのか少し練習が大変だったかなっと思われる方もいました。この部門でも男子が非常にモーツァルトらしい、良い演奏をしていました。最後の高校生部門、やはり音楽の大学を目指しているだけあって、弾き込んでいますし、解釈もしっかり伝わる演奏でした。
神奈川Ⅱ予選 大久保礼子 先生 アモーレミュージックスクール 講師、ヴァイオリニスト
全体的に完成度の高い演奏でした。今後気にしてほしい点として選曲についてです。まず、発展段階の小中学生は背伸びをしない選曲をしましょう。もし難易度を上げるなら短めの曲にする等工夫が必要です。高い技術を盛り込むことより基本的な音程、テンポ、リズムの正確さの精度を上げて臨む方が評価も高くなります。特に今回は完成度が高い演奏をしていても音の長さについてややおろそかだったように見受けられました。今一度楽譜を見直して自分の演奏を振り返ってほしいと思います。これらを踏まえた上で技術度を上げていく選曲をしていくとよいと思います。高校生以上になると音楽への取り組み方が演奏にダイレクトに出てしまいます。コンクールに出る以上しっかり準備して選曲も目的をもって選び、エントリーしましょう。選曲については具体的になりますが演奏出来るのであればやはり協奏曲(第1楽章)がしっかりと演奏出来ることがアピール出来、メリハリもつくのでまとまりやすいと思います。(ただ、モーツァルト、ベートーヴェン、ハイドン等古典派はすべての音において完璧さが求められるので危険)無伴奏であればパガニーニ、イザイなどがよいアピールが出来るのではないでしょうか。コンクールを受けるにあたって選曲に迷ったときに参考になれば幸いです。
福岡予選 佐藤久美 先生 ぴっころの会 主宰、ピアノ講師
福岡予選を聴かせていただきました。今回は珍しく管楽器のエントリーがいらっしゃらなくて、ピアノ、声楽、ヴァイオリンのみという審査でした。とりわけ声楽のエントリーが多かったので、受けられた方は同年代【高校2、3年生】の演奏を聞くことができて、すごく刺激になり勉強になったのではないでしょうか。声楽と言えばもう一つ感じたことがありました。声楽の方は客席に向かって歌うので、それに慣れていらっしゃるからか、出入りやお辞儀や表情など、きちんとされてる方が多かったように見受けられました。ステージに立つのでやはりそこも大事かと思います。演奏についての感想は個々にお渡ししていますが、技術はおありのようですのに仕上げが間に合わなかったのか、雑な印象を受けてしまうような方もいらっしゃれば、綺麗な音できちんと演奏されて、気持ちよく聴くこともでき高得点をマークされた方もいらっしゃいました。今日の演奏を踏まえて、自分の音なり声なりをよく聴いて、さらに良い演奏ができるように練習して欲しいと思います。頑張ってください。
大阪予選 藤原茂子 先生 ヤマハ音楽教室 講師
第29回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール予選で一生懸命演奏なさっている出演の子供達の舞台で感じた事なのですが、曲全体の流れや曲の雰囲気など、大曲をそれなりにまとめ精一杯表現しようとご指導を受けていらっしゃるご様子が伝わってくる演奏が多くありました。ただ、演奏者ご自身の身体から溢れる極にあった表現や、情緒ある中に緻密なテクニックが少し欠ける方、特に楽譜上の音符や休符の正確さが曖昧になり、ただ箇所箇所の気分でテンポの揺れが生じてしまっている演奏がとても気になりました。勿論、場面場面の緩急など、曲にあった幅広い音色や動きのある演奏は必要だと思いますが、基本正確に譜読みをした上で、たっぷり表現して頂きたく感じました。
静岡予選 杉山章恵 先生 あきえ音楽教室主宰、合唱指導者
緊張感がありつつも、どこかほのぼのする雰囲気でした。学校の講堂だったからでしょうか?予選ということで、次回の本選へのステップアップをのぞみつつ、点数だけでなく、学んでほしい点を講評用紙にできるだけ、たくさん書きました。基礎をしっかり学んでコンクールに臨んだ方と、曲の周りだけを取り繕って出場された方とでは、歴然の違いがあります。普段のレッスンでは経験できない自分の演奏に向き合うということを学び、向上してほしいと思います。審査する側もいろいろな音楽表現を感じることができ、ワクワクドキドキします。聴く側が、耳と目と心が感動するような演奏家をめざして下さい。
茨城予選 吉成純子 先生 (株)ヤマハミュージックリテイリング水戸店講師、男声合唱団CHOR WAFNAピアニスト
この度初めて貴コンクール予選の審査をさせていただきました。過去には別なコンクール審査の経験も有るのですが、開始前の場内アナウンスにて「当コンクールは拍手の制限をしていません」との告知に驚くと同時に、温かな雰囲気になって良いな、と思いました。実際に演奏が始まると客席からはどの演奏にも大きな拍手が送られ、出場者の熱演を讃えていました。小さなお子さんたちが緊張しながらも懸命に練習の成果を出そうと頑張っていた姿に対し、こちらも精一杯の審査・採点をさせて頂いたつもりです。貴コンクールの更なる特徴は自由曲での参加という点だと思います。課題曲制のコンクールと違い出場者が自分に合った曲を選択出来るのは良い事ですが、その分選曲が重要になります。技術的にまだ無理そうな曲を背伸びして与えたり、本来早いテンポの曲をゆっくり演奏されてしまうと、どうしても高い点数はつけられません。指導者としてはそのお子さんの良さを最大限発揮できる曲を選ばなくてはなりませんので、普段からその生徒さんのテクニックや音色、手の大きさや性格に至るまで把握しておく必要があります。
茨城予選 片岡麻衣 先生 茨城県立水戸第三高等学校非常勤講師、桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室講師
私は予選の審査をさせて頂いたのですが、技術レベルについては、きちんと勉強されているお子さんもおりましたが、1日で2曲用意しなくてはならないことが大変なのか、全体的にもう少しきちんとさらって欲しいなと感じました。音楽レベルに関しましても、例えば作曲家についてや、その曲についての理解がまだ不十分なのではないかな?と思いましたし、自分で弾いている音を聞いて弾いていないお子さんが多いように感じました。今後の学習についてですが、コンクールの曲に取り組むことは良いですが、基礎的な練習(ハノンやエチュードなど)を習慣化し、指を鍛えていくことが非常に大事だと思います。また曲に取り組む時には、その曲の理解はもちろんのこと、作曲家についてやその時代背景についてなどに関しても、簡単にで構いませんので理解して取り組んでいくと、音楽性が広がってくると思います。
栃木予選 大島豪 先生 大島音楽教室主宰
先ず今回、小さな参加者も含め、コンクールという緊張する舞台で大きなミスもなく演奏できた点は立派だったと思います。それぞれが自分の今持っている力を充分発揮できたと思います。ピアノ部門、今回は小学生中心でしたが、皆それぞれ課題をこなしていたとおもいます。細かい部分もおおむねこなしていたし、テンポも正確でした。欲をいえば、曲を消化し自分なりの表現ができるという所が感じられるともっとよかったと思います。ピアノは、例えばヴァイオリンなどと比べると一つ一つの音の響きになかなか意識がいかないのかもしれませんがひとつのフレーズは一つ一つの音からできていることを考えてそれぞれの音がきちんと響くようにするとフレーズがもっとつながってくるのだと思います。強弱などもつけただけでなくそれが効果的に聞こえるようにすると表現に幅が出るのだと思います。ヴァイオリン部門は今回は四人でしたが質は高かったと思います。ヴァイオリンの音に力強さがありそれが表現力につながった演奏が多かったと思います。とても聴いていて魅力的な演奏が多かったです。声楽部門は今回は二人、ほかの部門に比べて年齢が上という事もあって、なかなか意欲的な選曲だったと思います。ただ技術的には例えば高音の出し方や、〝ェ"の母音で響きがなくなるなど今後に課題を残しました。声楽というのは肉体的な成熟とともに技術がみについて行くので毎日の練習にどれだけ目的意識を持てるかが大事です。今後に期待します。最後に参加者の皆様へ、このコンクールの結果は大きいとは思いますが、大事なのはこの経験をいかに今後に活かしていくかということです。がんばってください。
大阪予選 棚田都美子 先生 大阪音楽大学非常勤講師、ヤマハ音楽院講師
技術レベルについて、全体的には良い方だと思いました。大きくテンポが乱れることもなく、流れがスムーズでまとまっていたかと思います。ただ、音の「粒」、「質」などをよく聴いてほしいと思いました。自分の出している音をよく聴くことでテクニックがもっと向上できるかと思いました。音楽レベルについて、 もう一歩深く表現できてほしいと思いました。メロディーと伴奏のバランスや、フレーズのまとまり感、場面の変化、山場の盛り上り等、むずかしいとは思いますが要求度をもう少し高められると思いました。fやpについてももっと、音作りができると思いました。今後のアドバイスとして、譜読みをして弾くことだけでなく、作曲家のこと、時代背景、形式、ハーモニー進行等を知って、どんな「曲」なのか考えてみるともっと楽しく興味深く弾けると思います。自分の出している「音」をよく聴けるともっと上手になると思います。人前で弾くことはとてもエネルギーのいることだと思います。みなさんそれぞれのレベルで立派でした。これからもコンクールを利用し成長していってくださることを祈っています。
大阪予選 秦彩奈 先生 関西大学第一高等学校講師
キッズから中学生までと年齢はそれぞれ違いますが、選曲も演奏法も自分に合った方法で、一人一人の世界を持っており、個性溢れる素敵な演奏でした。一つ気になったことですが、ブレスが浅いことが目立ちました。胸だけで吸うのでなく、もっとお腹の下まで、身体全体で呼吸をしてほしいと感じました。舞台に立つとなかなか難しいと思いますが、リラックスし脱力して弾けるとより良い演奏になると思います。音楽は、ただ楽譜通り演奏するだけでなく、楽譜から読み取れるものや伝えたいこと、それを自分なりにどう表現するかなどを工夫する必要があります。時間をかけどういう方向性なのかを試行錯誤しながら見つけていくもので、音はメッセージとして私たちに語りかけてくれるので、輝かしくもありダイナミックな音がでるようになればもっとレベルアップできるものと感じます。ただ音を並べるだけでなく、ピアノをオーケストラと考え、ヴァイオリンのピッチカートのようなはじく音、トランペットなど管楽器のような音、ハープのような美しく流れるような音など、様々な楽器におきかえイメージすることも一つの方法ではないでしょうか。音楽に向き合う姿勢や、強い気持ちが大事で、向上心を持って積極的に練習に励んで下さい。自分だけの音、自分だけの演奏をして下さい。この経験は、これからの財産になります。
埼玉Ⅱ予選 中村ゆか里 先生 桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室講師
やはり関東圏、という事もあるのでしょうか。全体を通して非常にレベルが高くて本当に驚きました。特にキッズ部門のピアノ、ヴァイオリン部門は非常にレベルが高かったです。私はヴァイオリンですので、ヴァイオリンに関していいますと、テクニック面(ヴィブラート、運弓、音程)がかなりしっかり勉強されていて、プラス音楽性も豊かで表現力にも富んでいました。歩き方やおじぎの仕方やステージマナーもかなりしっかり勉強されており、微笑ましく思いました。このコンクールの一つの良さとして、最初と最後の拍手を制限していなく、逆に激励の気持ちを込めて拍手を促しているアナウンスが入るところが非常に良い点の一つだと思いました。
埼玉Ⅰ予選 中島麻己 先生 森の音楽教室講師 、ピアノグレード検定会代表
ピアノ部門は、小学校低学年から大学生までを聴かせていただきました。予選ということもあってか、曲のレベルにばらつきがありましたが、各々が様々なレベルの曲を自分なりに演奏されていました。技術的な点では、細かく指が動いてはいますが、緊張からかタッチが浅めなのと、暗譜忘れやミスタッチがあるため、指先で次の音の準備をして弾くことが必要だと思います。また、和音を弾きにくそうにしていたので、重音の技術を身につけると更に良くなると思いました。ペダリングも、ホールの響きに合わせて耳で聴き分けることが重要だとあらためて思いました。今回のようにホールで弾く機会を得るのは、どの楽器においても大切なことです。音楽的な点においては、表現はもっと大げさに、特に声楽部門は顔の表情をつけるなど、工夫されると良いと思います。ピアノ部門も、フレーズとフレーズの間はあわてず、またその作品の作曲家の時代背景も考え、多彩な音色で演奏することをイメージしていかなければと思います。全体的に音色の変化に富んでいる方が、少なかったのが残念です。コンクールという場において、ふさわしい演奏をすることも大切ですが、音楽を表現することや人前で演奏することに喜びを感じられるように、また、緊張の先にある充実感が得られれば、次への意欲にもつながるでしょう。今後も様々な演奏を聴けるのを楽しみにしています。
埼玉Ⅰ予選 山本直子 先生 やまもとなおこフルート教室主宰、Royal Music Garden講師
テクニックに関しては、速いパッセージの部分が速すぎて、一つ一つの音の粒が見えない演奏が多いように思いましたので、テンポ設定をきちんとしていただきたいと思います。それから、フレーズ感のない演奏も目立ちました。弦楽器はブレスを取らなくてよい楽器なので、フレーズが全部繋がって聴こえてしまい、どこがフレーズの切れ目なのかわからない演奏が多く、管楽器はフレーズをもう少し長く取れるようなブレスの取り方を研究していただきたいと思いました。それと、ステージマナーについて。登場した瞬間からはけるまでの動作、服装など、観客の印象を左右します。膝が見えるスカートや、ウエッジソールのサンダル、ダボダボで裾が床についているズボンなどは、コンクールのステージでは印象が良くないと感じました。いろいろと書かせていただきましたが、全体的には、出演者おひとりおひとりが予選からかなりレベルの高い演奏を聴かせてくださり、特に小・中学生の表現力の高さには驚かされました。出演者にお渡しした講評用紙には、良いところと直したほうが良いところを、心を込めて書かせていただきましたので、少しでも今後のお役に立てることがございましたら幸いです。今後の皆様の活躍に期待したいと思います。
広島予選 大坪加奈 先生 エリザベト音楽大学非常勤講師
今回の予選では、ピアノ・ヴァイオリン・管楽器の参加者の皆様の演奏を聴かせていただきました。皆様良く準備されスムーズな演奏であることにまず感心いたしました。特に、日頃ソロで聴かせていただく機会があまりないオーボエ・ファゴット・トランペットの演奏は大変興味深く聞かせていただき、とても勉強になりました。ピアノ以外の楽器は音程を取ることがなかなか大変ですのに、皆様しっかりとした音程の上に、音楽的にも充実した説得力ある演奏をされていたことは素晴らしいと思いました。ピアノは、一度にたくさんの音を出すことが出来る、という他の楽器にはない特質がありますが、それを活かした演奏をするのはなかなか難しいことであるとあらためて感じました。同時に出る各音は別々の楽器が担当するようなイメージで、横につながっていく音楽を感じることが大切になる曲もあると思います。そして、それぞれの声部のバランス聞きながら調和させる、オーケストラを指揮者するような能力も必要となってくると思います。ピアノのために書かれた曲をオーケストラの曲に編曲してみる、というようなことは、大変良い勉強になると思います。そのためには他の楽器や色々な音楽に精通することが良い演奏につながるのではないかと思います。本日演奏された皆様からは、真剣に音楽に取り組んでいらっしゃる姿勢を感じ取ることが出来て、とても嬉しいひと時でした。今日のこの気持ちをずっと持ち続けてますます成長されますことをお祈り申し上げます。
兵庫予選 アーカス佐伯しずか 先生 ピアニスト<ニューヨーク在住>
今回の審査させていただいた予選、本質的に音楽的に深められていたか、ということですが「美しさ」「ミス」のことにばかり重点がおかれており、音楽的には少々乏しかったのではないかと思います。もう少し、それぞれの音楽的な自由な解釈、(先生に言われたことに従う、ということはとてもよく出来ていたのではないかと思いますが)自発性というものに期待したいと思います。
兵庫予選 佐伯伸枝 先生 ぽこあぽこ音楽教室主宰、オーボエ奏者
総評としては少しおとなしすぎる感じがいたしました。暗譜と楽譜のダイナミックや表現法を忠実に見てはいるのですが、それが足かせになってしまうのか、自分の音楽が一体何なのかわからなく弾かされている感じがしてなりませんでした。もっと自分の表現を惜しみ無く出してもよいんじゃないかと思います。上手に弾けているように一見聞こえますが、させられているように感じてしまいました。暗譜までしてダイナミックまでつけているのであれば、あと一歩踏み込んでコンクールまた演奏会本場に望めるともっと深まってくるとおもいます。またフォームばかりが優先して、どのような音を出したいかということがわからなくなってしまっているようにも思います。これから本選へ向けてさらなる課題として取り組んで頂いて、素晴らしい演奏を聴かせてもらいたいものです。
千葉予選 森本真由美 先生 声楽家、ジュニアコーラスフェアリーズ主宰・合唱指導者
ピアノ部門は今回レベルが高かったと思います。特に高校生は才能溢れる演奏を聴くことが出来ました。弦楽器に関しても高いレベルで、素晴らしい演奏が多かったです。特にピアノや弦楽器は練習時間を要すると思いますが、十分に練習して準備しているお子様が多かったので、比較的安心して演奏を聴くことが出来ました。金管、木管楽器も、受験生は中高生でしたが、伸びやかな演奏で、表現力豊かでした。全般的にこの日の予選はレベルが高かったと思います。残念だったのが、ピアノの椅子の高さを直すときに、お客様にお尻を向けて直したりなどの、ステージマナーが気になる受験者が若干いました。音を出す瞬間からだけでなく、ステージに出たところから綺麗な流れがあるとやはり好感が持てます。お辞儀など、ステージでの立ち振る舞いも指導を受けて欲しいと思いました。
長野Ⅰ予選 小池由美 先生 演奏家、声楽家、YUMI MUSIC STUDIO主宰、ピティナ蓼科サラダステーション代表
今回の予選会では、前回の本選会でも感じましたが、とてもレベルが高かったように思いました。技術的にも勿論のことですが、情感豊かに、表現力のある演奏が多かったように思いました。聴いていて心が豊かになるような、音楽的にとても質の高いものがあったには驚きました。ただ、出場者がもう少し多ければ演奏する方々も、聴衆も、勉強になると思いました。本選会は別の曲を演奏して頂くのでとても楽しみにしています。
岐阜予選 加藤菜津子 先生 加藤菜津子ヴァイオリン教室主宰
毎回どんな演奏が聴けるかなと楽しみにしております。今回は、全体的に難なく不可もない演奏が多く感じました。コンクールを受けるにあたっての最低限の指導をきちんとされていることもうかがえました。そんな中で気になったことは、指導者の存在がみえてしまうことです。どんなふうに指導されているかが伝わってきてしまうことです。演奏している本人の思いが伝わってこないんです。レッスンで受けたことを消化しきれていない出場者が8割以上だとかんじました。丁寧なことは大事ですが、そこで終わってしまったら音楽ではないですよね。そんなふうにかんじました。また、せっかくフォーマルなドレスを身に着けているのに、まるでパジャマをきて歩いているような方も気になりました。せっかく音楽というファンタジーを作り上げるのですから、演奏に入る前から気持ちを持っていってほしいと思います。毎回所感にかいていることですが、もうひとつ言えることはおおよそステージで演奏するのにふさわしくない服装の方もいらっしゃいます。これも気をつけていただけたらよいことですね。ステージにあがるものの誇りをもって演奏に臨んでいただきたいと思います。
岡山予選 山本暁彦 先生 山本あきひこのぴあの教室主宰
全日本ジュニアクラシック音楽コンクールの特徴なのか、この日の出場者の皆様の雰囲気だったのか、会場に到着した時からもちろんコンクール独特のピリッとした空気感もありましたが、その中にもどことなく温かい雰囲気がありました。審査の際にステージを見ていても、ピアノも弦楽器も管楽器も、出場者の皆さんがどことなく温かい雰囲気を持たれていたように感じます。得意な曲で臨める自由曲制ですし、主催されている側からも「子どもたちのことをみんなで応援して育てましょう!」っていう趣旨がとてもわかりやすく伝わってきますし、それでいて、全国大会は相応のハイレベルな演奏になっています。子どもさんたちの挑戦の場、ステージ経験の場、人生の中での素晴らしい経験を重ねることができる場として、とてもおすすめだと感じました。私もたくさんの素敵な演奏を聴かせていただくことが出来て、とても楽しかったです。出場者の皆様、主催の東京国際芸術協会の皆様のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
愛知Ⅱ予選 加藤夕貴 先生 クラブナージ音楽教室チェロ講師
今回愛知予選にて声楽・弦楽器・管楽器の審査をさせて頂きました。みなさんそれぞれ緊張感のある中で個々の良さをしっかり出して演奏されていて、聴いていて楽しめる演奏ばかりでした。その中で声楽の方は特にですが、舞台に上がった瞬間からステージマナーを意識してしっかりと曲に入り込めるとより音楽がより豊かになっていくと思います。また、管楽器の方は譜面台の位置を工夫するといいと思います。音の飛ぶ方向に譜面台があるのはもったいない気がします。舞台での演奏は音だけではなく表情や手の動き・体の動きなども含めて聴く側が楽しむものですので、楽器や演奏姿が隠れてしまっているのは残念に思ってしまいます。まだまだこれから音楽に対して熱意と愛情を持ってたくさん成長される方々ばかりだと思いますので、みなさんの演奏をまたどこかで聴けることを楽しみにしています。
愛知Ⅰ予選 松名深雪 先生 声楽家、深雪おんがく教室主宰
愛知予選を審査させていただいて本日私が担当させていただいたのは愛知予選のピアノ部門小学生から大学生までです。コンクールでは舞台袖から歩いて来てお辞儀をするところから見させていただきます。特に小さいお子様にとっては、舞台経験がないと椅子に座って自分で演奏する流れをつかむだけでも大変なことと思います。ですから普段のレッスン時から、本番同様に緊張した場面を作って練習することも大切だと思いました。履きなれない靴、着慣れないドレスの扱いに気をとられると演奏に影響してしまいますから。高学年以上になると、皆さん舞台での経験を積まれていると見受けられる方ばかりで、安心して聴くことができました。また、今回は背伸びしすぎる曲はなく、皆さんが選曲の時から何を表現していきたいかがわかる曲ばかりで好感が持てました。そして、小学生のうちは個性を出すことより、癖のない弾き方をまず学んでいくことが大切だと思いました。楽譜に書いてあるフレーズを弾くためには、一つ癖があるだけでその部分がぎこちない演奏になることがあります。今回は肘の硬い方が何名かみえ、スケールやアルペジョを弾くたびに肘がついてくるとリズムが正確にならなくなりますから、早い時期に直していくことが大切だと思いました。
福井予選 寺尾敏幸 先生 仁愛女子短期大学名誉教授
時節柄応募者少数でしたが、非常に良質な音楽が披歴され良かったと思います。ピアノ部門の方は素直な自然体で、美しい音色で流動性のある無理のない演奏でした。構成もしっかりしていて音楽性、技巧ともに備わった優秀な演奏でした。ヴァイオリンもベストに近いと思います。フルートは3人それぞれの目標はクリアーできたのではないでしょうか。ピアノ部門の次へのステップとしての心得。①ディアベリはロンドらしい細やかさが備わると良いでしょう。記号の見方ですが楔型のスタッカートは弦楽器の重みを付けて弾ませる奏法を試みると意味が分かると思います。>もフレーズの重心に置くと考えると生きてくるでしょう。カデンツ風なスケールのやり取りは、急ぐよりも左右の手の動きをペアー化すると分かり易く楽しめます。②ベートーヴェンのロンドはスラーのかかったレガートの部分と、スラーのないノンレガート風な部分がはっきりと描き分けてあります。対位法的に観察して弾き分けてみると、とても面白さが加わります。一般的には余り実行されていませんが苦労して会得すればポリフォニックな楽しみも増し演奏として内容のある雄弁なものとなるでしょう。③ヴァイオリンの技巧はよく要領を得ませんが、一つのフレーズを終わらせるのを気づかいながら次のフレーズの備えをすることが完成すると、なお素晴らしくなるでしょう。以上は他の楽曲を学習する時にもヒントになるかと思い記しました。現在の素敵な演奏をよりよく充実したものにして、音楽の歓びを味わえるようご精進ください。