全日本ジュニアクラシック音楽コンクール

46th
ネット申込

第30回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール審査員所感Message from judges

全日本ジュニアクラシック音楽コンクールの審査に携わって下さった先生方から、御担当いただいた予選・本選・全国大会について総評をお寄せいただきました。今後コンクールに御応募を予定していらっしゃる親御様、御本人、また生徒の参加を予定していらっしゃる先生方への貴重なメッセージとなっております。

※先生からのメッセージの一部を抜粋して掲載しています。

総 評

桜の開花が各地で聞こえ始めた3月26日から4月3日までの12会場にて、第30回全日本ジュニアクラシック音楽コンクールが大変多くの皆様にご参加をいただき開催されました。関係者を代表致しまして、篤く御礼申し上げます。

近年、低学年の皆様のレベルが上がっており、日頃より真面目に練習されている成果が表れておりました。速い、細かい動き、音楽を表現したいという豊かな音楽性等、よく伝わって来る演奏が多数ありました。中学生の部では、充分な音量、正確なテクニック、聴く人々を魅了する演奏には、本当にレベルの高さを実感致しました。現在少子化が進む中、ピアノ学習者、またクラシック音楽人口が減少傾向と言われておりますが、人間形成のため、心の豊かさ、感情の安定に、音楽は不可欠です。

今後のアドバイスとして、左手、右手のバランスの必要性です。右手が美しく旋律を歌えていても、左手の伴奏が強すぎて邪魔をしない様に。グランドピアノの形を見るとすぐに分かることですが、低音の弦が長いこと。高音にいくほど短くなっています。弦が長い方が大きい音が出ることになり、楽器の構造を知ることも必要です。右手よりも左手は控えて演奏出来る様に習慣づけて下さい。次に選曲も大事です。練習は苦しいものにならない様に、意欲、弾く喜び、楽しさを感じながら練習出来る様な選曲を心掛けましょう。また、作曲家の時代背景や音楽様式を認識し、時代が求めている音色で演奏することが大切です。

また皆様の向上された演奏を是非聴かせて頂きたいと思います。コンクール開催にあたりご尽力頂きました先生方、スタッフの皆様に、心より御礼申し上げます。

一般社団法人東京国際芸術協会 会長
東邦音楽大学 特任教授
太田 幸子

全国大会 森直紀先生 昭和音楽大学准教授

全国大会だけあり、出演した小学生達は皆優れた演奏を披露していた。高度な演奏力を求められる選曲も多く、出演者のレヴェルの高さには目をみはるものがあった。その状況の中ではある程度優れた演奏であっても平凡に聴こえてしまい、高い評価を得ることは難しくなる。きちんと弾けていても本人の演奏意欲があまり感じられず、先生に言われるままに弾いているようなインパクトに欠ける演奏も少なくはなかった。しかしその中でも音楽性・技巧性ともに小学生とは思えないような優れた演奏も多々みられ、このコンクールが確実にレヴェルを上げていると感じることが出来た。全国大会へと進出された高校生は皆さん安定感のある演奏を披露されていた。特に上位入賞者はかなりの水準に達しており、演奏曲の難度、音楽的表出力、技術的完成度のどれもが一般的な高校生のレヴェをル超えた、聴衆に感動を与えられる素晴らしいものであった。演奏者の音楽性の有無が最重要ではあるものの、評価の観点はやはり当日の演奏の完成度にあり、実力はあるにもかかわらず緊張から生じるミスタッチや暗譜忘れ、タッチのコントロール不足などが評価結果に影響を与えるので、対策としては日頃からこの点に十分留意して練習すると同時に、多くの本番をこなしながら場慣れしていくことが有効であると思われる。

全国大会 山﨑みのり先生 武蔵野音楽大学講師

大変にレベルの高い全国大会でした。高校生のみなさんの集中力、それぞれの音楽に対する真摯な向き合い方が感じられ、聴き応えのある演奏が続きました。特に本選も拝聴した方の今回の演奏は、この短期間でさらに練り上げられられ、より素晴らしい演奏になっており、とても感心しました。不思議なもので、何度も舞台を踏まれている方が纏う独特のオーラのようなものがあります。舞台に出て来た時から演奏を終えるまでその雰囲気で会場を包める方です。演奏時間外も演奏の一部として感じさせるようなその感覚は、本番の緊張感と何回も対峙することで、その人自身に覚悟と自信が身についていくということなのかもしれません。今回の出場者の方の中にも、そのような方が何人かいらっしゃいました。演奏にも自ずと説得力があり、伝える力の強い音楽となっていました。短期間に照準を合わせて、これだけ上達できる若さと集中力を持つ皆さん、今後も皆さんの活躍に期待しています。

全国大会 益田みどり先生 日本弦楽指導者協会関東支部理事、ダイナーズカルチャー講師

皆様本当に素晴らしい演奏を有難うございました。熱演に感動いたしました。演奏拝聴させて頂き審査員控え室に戻ってからの審査員の先生は開口一番、皆さん素晴らしい!凄い!と異口同音でした。全日本ジュニアクラシックコンクールは回を重ねる毎にレベルがどんどん高くなり毎回拝聴させて頂くのがたのしみです。キッズ部門はマナー、音質等とてもきちんとしていらしてここ数年で随分変わったと思います。小学校低学年は巨匠の様な演奏をなさるボーイズに感心いたしました。本当に質の高い演奏に感動でした。小学校中学年高学年も同様です。高校生部門大学生部門は曲目もバラエティーにとんでいてまるでコンサートの様で楽しませて頂きました。ドレス、舞台マナーも素敵でした。皆様舞台に本番に慣れていらっしゃる感じでした。これからの日本の弦楽器界は益々発展していくと確信いたしました。

全国大会 吉田雅信先生 東京室内管弦楽団首席フルート奏者、ムラマツフルートレッスンセンター、オトワ楽器講師

3月29日全国大会フルート部門の審査を担当しました。参加された35名の皆さんは各々の持ち駒をフルに使って輝かしい演奏振りで聞いている側も素晴らしい充実した時間を持つ事が出来ました。今回印象に残った事を書きましょう。ひとつはチューニングです。皆さんはステージリハーサル無しで演奏に臨んでいると思いますがチューニングの時間は短い間に会場の響きを確かめ今日の演奏の最終方針を確認する大変重要な時間です。そして聴く側にとっては奏者の楽器演奏力のかなりの部分がチューニングで判断がつくものです。音を合わせる以外に大事な事はチューニングの時は音をまっすぐに出す事です。これは管楽器の基本中の基本ですから必ず意識して下さい。それからチューニングの時はmpかpで吹きますが可能な限り美しい音で吹く事です。有名な笛吹き達パユやゴールウェイ、ランパルといった人達のチューニングは大変美しくそれが演奏への期待を高める事にもなりました。これはコンクールでも同じ事なのです。今回でもチューニングのしっかりしている人は演奏も良く高評価を得ている場合が多いので自信が持てない場合はチューニングをさらってみて下さい。次に楽譜の読み込みです。皆さん練習の時は楽譜を最大限尊重しましょう。作曲家自身が書き込んだ指示は神の声だと思って必ず実現する事が大事です。ところが記譜法に限界があって例えばクレッシェンドと書いてあっても正確にどこからかとかその度合いは書かれていないのが普通です。そこで多彩な作曲者の声と自分の感覚をシンクロさせてこの曲は自分自身で書いたと思える位曲と親密になって曲を自分自身で細かい部分まで再構成する事が必要です。今回はそれが達成された人もいましたし気持ちはわかるが表に出ない人やずっと傍観者のままの人もいて様々でしたが大切な事はその作業が実現すればそんな楽しい事は無いという事です、それこそが音楽作りの核心なのです。皆さんの前には長いけれど素晴らしい道が広がっています、また皆さんの笛が聞ける日を楽しみにしています。

全国大会 上田恭子先生 洗足学園音楽大学講師

全国大会の審査を致しました。まず大学部門について。この部門については少し物足りなさを感じました。演奏の完成度の低さ、ピアニストとのバランスの悪さ、リズム認識の甘さ等、もう少し緻密に練習し、作曲家の意図する事を勉強すればより芸術的になるのにと思い残念に思いました。次に中学部門について。今回全員が素晴らしい演奏でした。基礎力があり大変優雅で音楽を感じながら演奏していました。特に1位の方の演奏は表現力、音楽性、独創性全てに於いて素晴らしかったです。次に高校生部門について。大変レベルが上がったように感じました。ただ基礎を再確認すればより安定した演奏が出来るのではと思う方が多々おりました。まず立ち方です。もう少し足を広げ重心の位置を意識して音を出したらより響きを楽に出せるのではと思いました。次にブレスについて、浅い方がおりました。吹奏楽器ですからしっかりとしたブレスで、まず息をたっぷり吸うと言う意識を持ってみて下さい。唇の固い方も多かったです。跳躍する時や、ピアニッシモを出す為には唇の柔軟性が必要になります。毎日のソノリテ練習の折に力を抜き音を出す練習を取り入れてみて下さい。最後に皆さん。これからも感性豊かに作品に対し真摯な姿勢で奏でていって下さい。

全国大会 丸田悠太先生 東京佼成ウインドオーケストラ、昭和音楽大学非常勤講師

全日本ジュニアクラシック音楽コンクール全国大会に出場された皆さん、大変お疲れ様でした。今回から新たにフルート部門が新設されたことにより、今まで以上にレベルの高いコンクールとなりましたし、私たち審査員も集中して皆さんの演奏を聴くことが出来ました。毎回所感という形で書かせていただいておりますが、今大会でも気になったポイントをこの場をお借りしてお伝えさせていただきます。今回の皆さんの演奏で特に気になった点としては①『吹きこみすぎ』②『音量が小さい部分が少ない』③『ピアノを聴かずに急いでしまう』という3つが挙げられます。①は単純に、とにかく息を楽器に入れるだけ入れて、音色を無視した音で吹いてしまう方がいたことです。フルートは音量勝負する楽器ではないので、ちゃんといつも美しい音色のイメージを持ってほしいです。②は①と似ていますが、その大きな音で鳴らした分、逆に小さい音量の表情が無いと非常に単調な演奏になってしまいます。いつも大きな声と強い口調で喋る人の印象はどう感じますか?演奏もそれと同じですよ。③は自分の演奏に夢中になるあまり、ピアニストそっちのけで自分のテンポで突き進んでしまう方がいたことです。ソロの演奏というのはあくまで“ピアノとの室内楽”ですから、自分だけが上手く吹けてもダメなのです。ちゃんとピアニストを尊重して、2つの楽器で最高のアンサンブルをすることが素晴らしい名演に繋がります。ソルフェージュの能力を鍛える意味でも、常にピアノをよく聴いて音楽の流れを感じるようにしてください。このコンクール経験者から未来の素晴らしいフルーティストが誕生することを願っています。次回も頑張ってください、お疲れ様でした♪

大阪Ⅰ本選 中村真理先生 むさしの音楽院代表

初めに、参加者が多くなってきたことに驚き、大変嬉しく思っております。このコンクールの意義や、良いところが広く理解され賛同されてきているのだと感じております。今回もキッズから大学生まで、とてもいい演奏を披露してくださいました。幼い子供さんも、しっかりしたテクニックでとても上手に演奏できておりました。これは、私が審査の御手伝いをさせて頂き始めた頃に比べると明らかにレベルアップしていると思います。その頃は音楽的にも高いレベルで演奏する子供さんと、そうでない子供さんとの格差があったように今思い出しております。しかしながら今回はどの参加者も非常に高いレベルで演奏されました。これからも背伸びせず、年齢とかけ離れていない曲を子供の素直な目線で演奏できるようしっかり学んで欲しいと願っております。小学生以降もとてもよく弾いていましたが、最近のこのコンクールは少しずつレベルを上げてきており、よく弾く参加者が増えたと感じております。中には基礎力を強化してもらいたい方もわずかばかりいらっしゃいましたが、概ねよく練習を重ねて、自分自身で咀嚼をしてきっちりと自分の音楽をつくっていたように感じております。これからもより一層多くの方達に参加して頂き、切磋琢磨しながら其々の能力を高めていって頂くことを心から祈念致します

東京Ⅰ本選 森直紀先生 昭和音楽大学准教授

本選進出者だけあって皆さん技術面は大変安定していました。暗譜の不安定からくる停滞や弾き直しが少数のお子さんにみられましたが、集中力のある優れた演奏が大半でした。音楽的にも年齢が上がるに従い表現力に優れた方が多くみられ、コンコールに場慣れされている余裕ある演奏に感心致しました。入賞されたお子さん達は、演奏曲にあった音色とテンポ感で、さらには細やかな強弱表現と適切なフレージング処理により際立った個性を発揮されていたので、参加された皆さんもその演奏を目標にして今後も勉強を続けていかれると良いと思います。

東京Ⅰ本選 水谷志保美先生 水谷音楽教室主宰

皆さん、コンクール間際まで、沢山練習されたことと思います。細かい指の動きや強弱、フーレーズの取り方等、楽譜に記載されている事は概ねよく取り組まれていました。練習の成果はそれぞれに発揮せれましたね。より良く表現する為には、指先の基礎的テクニックの反復練習を継続的にする事も大切なことの一つですね。指先の吸い付く力を養うこと、第一関節がぐらつかないこと、腕や手の重みをうまく利用して弾くこと、姿勢を良くすること、重心の移動を考えてみること等々、基本的なことを一つ一つ確認していくことで、大きな力を得る事が出来ます。次は、作曲者の意図や時代背景、その時代の楽器の特性・性能、現代の楽器の特性・性能、楽器の特性差、等、を考慮した上での演奏を心がけるとグレード・アップに繋がっていきますね。作曲家の代わりに、この曲の魅力を沢山の人々に紹介するという気持ちを持つことで、意識がぐっと向上していきます。そして自己表現に磨きをかけると更にレベル・アップした演奏になっていきます。作曲家や時代背景を理解した上で、自分の個性を主体的に表現した演奏が周囲の人たちから共感されると、とても嬉しいですよね。素敵なことです。特異な演奏ではなく、得意な演奏表現を目指すためには、自分の特性を思う存分発揮できる選曲もまた必須です。単純に好きな曲や他薦の選曲もよいですが、自分にとって魅力的で弾き込むことでドンドン味が出てくる曲、愛着が湧いてくる曲、練習が楽しみになる曲、というのもよいですね。何となくの選曲で、未消化のままの演奏で、無味乾燥な表現はあまりにももったいないですね。演奏時間の設定もとても大切ですね。自己表現を聴き手に充分に伝える為、日々の限られた時間での反復練習、より効果的な学習・練習を望める事、等を加味した上で演奏時間枠を考えていく事は選曲上、大変重要な事です。新たな素敵な曲との楽しい出会いがありますように。

埼玉Ⅰ本選 石塚優紀先生 ヤマハ音楽教室ニコニコ堂、東京音楽学院講師

本選ということで、やはり出場者皆さんのモチベーションの高さに身が引き締まる気持ちで聴かせて頂きました。この日は4歳から大学生までの幅広い世代に渡り、曲についても様々なものがあり、大変に興味深かったです。まずキッズの部ですが、たぶんまだピアノを始めて間もないであろう方々が、とても素直に指の形であったり指や腕の使い方であったり守りながら、熱心に日頃から学ばれている様子を感じました。これからの成長を楽しみに感じました。小学生の部は、この部では個人差がはっきりと出ていたと思います。選曲された難易度はそれほど大きな差はなかったのですが、タッチの仕方、音の響きを聴きながら弾いているか、音のバランスなどについて力の差が出ていました。曲が持っているテンポ感や、楽譜の読み込みなどについて今一歩の方もいましたので、表現することや感性ももちろん大切ですが、楽譜にあることを正しく理解することの大事さを日頃から感じられるとよいと思います。小学生中学年の部ですが、曲の難易度も曲の年代も多種多様になり、その中での審査をするのは中々大変でしたが、難曲をとてもきちんと正しい形を守って弾いている方もいましたが、難曲を曲の表面上の解釈にとどまっている方もいました。年齢に合ったと思われる曲でとてもていねいに美しく弾いていた方もいました。この学年になると、指の訓練、楽譜の理解力、表現力、耳で聴くことなど、日頃の積み重ねからくる力の差が出る時期なのでしょうね。どんな年齢であっても、作曲家が作った楽譜の中にあることをまずは正しく理解をして、演奏することが一番大切だと思います(当然のことですが・・・)。もしその方が、もっと違う曲の方が現段階ではよいのであれば、合った選曲をされるとよいと思います。でも皆さんがとても真剣に集中して演奏する姿にはとても心打たれました。小学生高学年の部ですが、この部門に入るとさすがに曲の大きさもぐんと上がり、生徒さん達の体格もしっかりしてきましたので、ピアノをよく鳴らしていました。学校の勉強なども大変になってくる時期でピアノの練習時間も限られていることと思いますが、曲を正しい形でよく理解して、良いタッチをもって弾いていたと思います(しかしタッチの良い方といまひとつの方の差は出ていました)。年齢的からか緊張感が大きくなるのか少し演奏に積極さが少なかったように感じました。この学年が特に、選曲にしても個人の指のテクニック、表現力など曲の解釈について差がありました。全国大会では伸び伸びと楽しんで弾いてくれたらよいのですが。中・高・大学生の部は、大曲も出てきて技術も磨かれた方達でとても興味深く聴かせて頂きました。各出場者の曲への思い入れなどもよく伝わってきました。指導を受けている先生からのアドバイスに加えて、自分自身の考えや気持ちを形にしているのだと聴いていてよくわかりました。曲の解釈や譜の読み込みなど、いくつか気になった方もいました。違う曲だったらこの方はどうだったのかしら・・・?と可能性を感じる方もいましたので、是非様々な曲で頑張ってほしいと思いました。指のテクニックなどは皆さんしっかりしていました。また、次の審査も楽しみにしています。

埼玉Ⅰ本選 上田恭子先生 洗足学園音楽大学講師

まずフルート部門について。今回感じた事は演奏する曲についてもう少し掘り下げた解釈が必要だと言う事です。作曲者の意図しているものや、時代背景、曲の成り立ち等、もう少し勉強した上で演奏しないと全国レベルの演奏に繋がらないと思いました。次に木管部門についてです。今回かなりレベルが上がってきたように感じました。特に中学生の方々の演奏は音楽性、独創性を感じました。歌いあげる力も大変あり将来性を感じました。全体ではおなかの支えが出来ていない方がおり、深いブレスが出来ていませんでした。音を奏でる上で基礎的な練習を重ねて音作りをして下さい。音程のふらつきも改善されます。またピアノとのバランスの悪い方もいらっしゃいました。録音を聞いてピアニストとアンサンブルの確認して下さい。次に金管部門について。おなかの支えが弱い方が多かったです。曲のレベルは高いのですが、それに追いつく基礎が出来ていないようでした。日々の基礎練習で改善して下さい。最後に皆さん。これからも音楽を奏でる喜びを感じながら演奏していって下さい。またより芸術や、音楽を聴き、完成も成長させて下さいね。

愛知Ⅱ本選 加藤菜津子先生 加藤菜津子ヴァイオリン教室主宰

今回印象にのこり、また審査が難しかった点は、低学年の方の曲の難易度についてでした。近年、難易度の高い曲を小さいお子様が演奏することはめずらしくなくなってきました。その影響だと思いますが、低学年で難しい曲を弾くのが当たり前になり、どうもテンポをおとしたり、または、弾きこなせていないのに、難易度の高い曲を選ばなくてはならない状況に陥っています。しかしながら、まずあまりに遅いテンポは丁寧に弾けてはいるが、曲想を損なってしまいます。また、雰囲気だけで乗り切ろうとするのも問題です。バイオリン界の低年齢化にどう向き合っていくか、私たち指導者も大きな試練をむかえていると思います。やはり弾くだけでなく、その曲、曲の素晴らしさ、偉大さを汚さない、それを念頭に置かねばと強く思わせられるコンクールでした。たとえ、低学年であってもです。もちろん難しい曲に挑戦することは、ちいさなお子さんには大変なことです。しかし曲を汚してしまうなら、弾いてはならない、そんなことも伝えていかなくてはいけないのだとおもいました。

群馬本選 中村陽先生 作編曲家

本選ということもあり、皆さん入念に準備をして臨まれたということが良く聴こえてくる演奏でした。技術的なレベルの水準は総じて高いと感じました。今後も変わらずに研鑽を続けてほしいと思いますが、一つ気にしてみてほしいのは「音作り」です。日頃から「いい音」を出す習慣をつけてほしいと思います。フォルテを大きい音で弾こうとする余り乱暴に聴こえてしまったり、ピアノを小さい音で弾こうとする余りか細く聴こえてしまったり、そういった場面が多々ありました。音の大小だけでなく、明るい音や暗い音、その他にもたくさんの「いい音」があると思います。日々の練習でその「いい音」の引き出しをたくさん増やしていけると今後の演奏の幅がぐっと広がると思います。その「いい音」の引き出しの中から、今練習している曲に合った音色を取り出してくる、そのようなイメージを持ってみると良いかもしれません。しかし全く同じ曲というものはありませんから、引き出した「いい音」がその曲に合うとは限りません。その「いい音」に何かしらのアレンジを加えていかなければなりません。そのアレンジの手助けになるものが「譜読み」です。今回は「譜読み」についてお話ししたいと思います。まずは「曲の背景」について知りましょう。作曲者はどこの国の人なのか、その国の特徴はなにか、どういう場面で書かれた曲なのかetc…。次はもう少し踏み込んで楽譜を見てみます。この曲は大きく分けていくつの部分に分かれているのか。速い部分、ゆっくりな部分、きれいな部分、力強い部分etc…。次はさらに踏み込んで楽譜を見てみましょう。どういう和音が使われているのか、どんなリズムが使われているのかetc…。ここまで来たら一番最初に戻ります。すると、今までただ楽譜を見ていただけではわからなかったことが読み取れるようになってきます。「この曲を書いた人はスペイン生まれだからこんなリズムやこんな和音を使っているんだな。今までずっと幸せだったけど、ある事件でつらい思いをした時に書かれた曲だから、この速い部分があってゆっくりな部分につながるんだな。つらいことがあったから、この悲しい和音が使われているんだな」という具合です。物事の感じ方は人それぞれですから、譜読みをすることで感じたことは、「こう思われたらどうしよう」などというように人の目を気にして変える必要はありません。自信を持ってください。譜読みをすることで感じた「自分だけの思い」を音に乗せましょう。皆さんの今後の演奏が、「自分だけのいい音」で満たされることを願います。皆さんの「自分だけのいい音」を聴けることを楽しみに、私も邁進したいと思います。ありがとうございました。

東京Ⅲ本選 山﨑みのり先生 武蔵野音楽大学講師

東京Ⅲ本選を聴かせていただきました。全体的に、演奏水準の高い本選だったと言えます。特に高校生はそれぞれ良く準備して臨んでいらしたのが感じられ、聴きごたえがありました。弾き込んでいれば、本番での緊張はするものの、いざ舞台に出るときに「準備したきた過程」が自分自身の背中を押してくれます。そういった演奏が出来ている方々の中、一部、練習不足で自信がない演奏をされている方も見受けられましたが、その出しきれなかったという思いも、実際に経験してみなければ心からの後悔などは味わえないものです。今後に貪欲に活かして行ってください。技術的なレベルにそれほど遜色ない方で、合否をわけたのはやはり音楽性にありました。厳しい表現になってしまいますが「借りてきたような歌い方」は、そのまま伝わるものです。その方ご自身の音楽を表現する方法として、自分の声の代わりに楽器を歌わせてください。これからもどうぞ頑張ってください。応援しております。

東京Ⅳ本選 水谷志保美先生 水谷音楽教室主宰

この日に向かって、たくさん練習を積まれたことと思います。実力を発揮することは出来ましたか。今回は、少なかったように感じました。本番に100%の達成感を経験することは難しいことです。だからこそ、100%に近づくように,実力を発揮できるように、誰しも不断の努力を積んできていますよね。曲を好きになること、メンタルが演奏に集中できているか否かで、演奏の出来が大きく左右することもあります。練習をしてきたという実績からの自信と、曲への理解を深め、曲の構築をしっかりし、音として表現することが出来ることからの自信が、本番での強いメンタルに繋がることもありますね。沢山の練習を積んだからこそ、実力発揮をしなければならないという、プレッシャーから緊張をし、メンタルが崩れていくこともありますね。本番での演奏が楽しめる様にするためには、どうしたらよいのでしょうか。曲を弾き込むときに、曲を自分にモノにするということも大切なことの1つであるのではないか、と今回深く感じました。楽譜や時代背景等から学ぶこと、先生から教えていただくこと、CDを聴く等は無論大切なことです。その上で、個の表現を築き上げることがとても素敵な演奏に繋がることも多々あります。個の意志での表現をしていくことで、曲への気持ちが深まり、体の中から曲が湧き出てくるような音楽表現へと繋がって行きやすくなります。例えば、「作曲家Aの曲を弾く私」から、「私が弾いた場合の作曲家Aの曲」です。そして、もう一つ大切なのは、聴きてサイドのマナーです。今回は、演奏中や、今正に演奏開始という瞬間での会場への出入りや、たち歩き、何かの電子音等、が幾度もありました。演奏する人たちの気持ちになって環境設定をしていきましょうね。出演者全員がそれぞれに達成感を味わえるように、楽しみながら、努力をしていきましょうね。

東京Ⅴ本選 森直紀先生 昭和音楽大学准教授

大学生の部は全員水準以上の技術の持ち主が揃いレヴェルの高い演奏が多かった。しかし技術的な問題はクリア出来ているが音楽的にはやや平板で物足りない演奏もみられたので、ただ楽譜を追うだけではなくさらに掘り下げた表現を目指して欲しいと感じた。中学生の部は全体に準備不足でまだ十分に弾き込まれていない演奏が多かった。学業に加え部活等で多忙な中学生にとって予選・本選と異なる2曲を完成させることはたやすいことではないが、早めの準備を心がけて余裕を持って舞台に立てるようにして欲しいと感じた。高校生の部は技術的にも音楽的にも大変優れた演奏が多く、それぞれ個性にあった意欲的な選曲により甲乙付けがたい熱演を披露していた。今後の更なる成長を期待する。

熊本本選 宗像真由美先生 元熊本音楽短期大学、元尚絅短期大学講師

熊本の本選では総体的に前回より参加者の方々の技術レベル及び、音楽レベルが向上されているのを感じました。まず、魅力的に演奏された生徒さん達は、最初のワンフレーズの大事さをよく理解されていて心地よい流れから始まりました。楽譜に忠実で繊細な指の運び、安定感のあるテンポに加え、バランスのとれた音楽、そして、フレーズ間の呼吸が絶妙であるが故にメロディーラインも生きてました。楽器によってはブレスの音が気になる所もあったものの、構築がしっかりしているからこそ、曲の安定感があり、又音楽と体が一体化している為、表現力も伺えました。次にもう少しという生徒さん達の演奏に触れたいと思います。部分的にはバランス良く、流れもあるのに途中、霞んで聴こえたりもしました。それはペダリングの問題であったり、音の発色であったり、テクニックの原因でもあるのでしょう。又、ここぞという場面で自分が出せる音以上に頑張り過ぎて雑な音色に聴こえてしまったのは、本当に勿体ない事です。全日本ジュニアクラシック音楽コンクールに参加された 皆さんに理解して頂きたい事は、音色の大切さです。自分自身が醸しだす音が、どんな風に伝わるか等、自分の耳でよく聴いて、場面に応じた色彩の変化を音で表現できる迄追求して頂きたいと思います。作曲家達との時空を超えた、絶え間ない対話を通じて創造していく事の楽しさを感じながら、作品をどう芽生えさせ、どう咲かせるかを物語れる演奏に近づけていって欲しいと思います。近づく事により、個性が光り輝き、ぞくぞくさせられるような心に響く演奏になるのではないでしょうか。それは、今も尚私自身の課題でもあります。又、皆さんの成長された音楽にお目にかかれるのを楽しみにしております。

岡山本選 大坪加奈先生 エリザベト音楽大学非常勤講師

このたびはピアノ部門21名の参加者の皆様の演奏を聴かせていただきました。ほとんどの方が予選の時とは違う曲で、それぞれ仕上げるためにそれなりに時間が必要であっただろうと思われる曲を用意され、暗譜も含めて仕上げていらっしゃり、かなり充実した内容であったと思います。中には、非常に鍛錬された技術でとても音楽的に演奏された方がいらっしゃり、大変感心しました。多くの皆さんに共通していた問題のひとつは、ダイナミックの幅の不足という点であるように思いました。その背景にはもしかしたら高音が響きにくい特性を持った楽器ということがあったかもしれません。その場合左右の音量のバランスが悪いまま弾かれるとますますその傾向が強くなり、メリハリのない音楽になってしまいます。他にもクレシェンドの始まりがすでに強く弾かれているため大きくならなかった、そして反対にディミヌエンドの始まりがすでに小さく弾かれていた、などの初歩的な問題が原因である場合もあったように思います。そして、豊かに表現するためには、音を紙の上に表現するという点で、ある意味限界があると言える楽譜というものに気持ちを込めて作曲家が書いている楽語に注目してみましょう。曲の中味や雰囲気を表す言葉を正しく理解し、そこからインスピレーションを得ることは、演奏する上で大きなヒントになります。たいていの場合イタリア語ですが、日本語にすると「速い」「遅い」「強い」「弱い」などと訳されているような言葉が今もイタリアでは日常に使われているという例がかなりあります。どんな時に使われているのかを知るだけでも想像力が広がり、豊かな表現につながると思います。「楽譜を正確に読む」ということは本当に奥の深いことであるとあらためて感じます。

岡山本選 山本暁彦先生 山本あきひこのぴあの教室主宰

平成28年2月28日(日)、倉敷市玉島文化センターにて行われました岡山本選ピアノ部門の審査を担当させて頂きました。前回よりも更に出場者が多くなり、また演奏される曲の完成度もとても高くなって来ているように感じました。今回はたまたま、朝から冷え込んだ日の開催となって、ステージへ向かう通路も舞台袖も冷たくて、特にドレスを着ておられる女性の出場者にはコンディショニングも難しかったのでは、と少し心配しました。でもそれは杞憂で、どの出場者の方も緊張された表情の中にも堂々とステージを務められ、演奏に加えて、ステージ自体も美しく作ろうとされている出場者の方々の気持ちが演奏からも、ステージマナーからも伝わって来ました。それは小さいお子さんからも!未来ある素敵な若いピアニストの皆様が、ピアノでの経験を通して、人しても素敵に成長されて行かれます事、期待しています。

岡山本選 中村創先生 島村楽器、三鈴学園、音楽教室マルベリー講師

コンクール本選というだけあって、全ての部門でレベルが充実しているなと感じました。中には何人か本当に技術レベルの高い子供さんがいらっしゃいました。私はバイオリンが専門なので、弦楽器部門に出演された中には才能のある優れた子がいるなと特に注目してしまいました。本当に日々の努力のたまものなのでしょうね、小学校低学年のお子さんでも、コンチェルトを正しい音程で、しっかりとビブラートをかけて堂々と演奏できていて驚きました、そして中学生ともなるとすでに大人顔負けの演奏をしていました。あえて改善すべき点を挙げさせていただきますと、もっと体を使った演奏ができたらさらに良い演奏になると思いました。例えばバイオリンでいいますと、ボウイングを前腕だけで行っている人が何人かいらっしゃいました。もっと上腕や肩甲骨、鎖骨も使われないといけないですし、その方が、演奏が楽になりますし、楽器もよく響かせることができると思います。音だけでなく体のことも考えて工夫してみてはいかがでしょうか。今回、全部門を通して審査させていただいて、全国大会に進めた人たちだけでなく、惜しくもそうでなかった人たちも、良い面や優れている面がたくさん見させていただくことができました。願わくば技術面だけでなく、皆さんがその音楽を通じて何を聴衆に伝えたいのかが分かる演奏ができるといいなと思います。コンクールを通じ、さらにこれから精進して、また心のこもった演奏を聴かせていただけたらと思います。

長野本選 早川育先生 MMR音楽事務所代表、NNMS講師、フルート奏者

2月最後の日曜日、春の陽気となった松本での長野本選を審査させていただきました。弦楽器、木管・金管楽器の皆さんの演奏を拝聴させていただきましたが、緊張のせいか「音程の不安定さ」を感じる方が多く、音の響きや広がりも失われてしまっていたのが残念でした。なかなか難しいことではありますが、「音を聴く」ことを常に忘れずに練習されると良いかと思います。また今回は、一指導者として、基礎力そして選曲の大切さも考えさせられました。やはり個々の持つテクニックや音楽性を最大限に引き出せる選曲は、コンクールといえども大切な要素のひとつなのではないかと思います。より難易度の高い曲に挑戦できるよう、これからも良い練習を積み重ねていただけることを心から願います。

愛知予選 奥村真先生 名古屋芸術大学講師

皆さんお上手で楽しく審査させて頂きました。ありがとうございました。キッズから高校生まで聴きましたが、ほとんどのお子さんに共通することは、やはり『基礎』だったように思います。テクニック的には、スケールが危ない、アルペジオで1指が飛び出る、跳躍で次のポジションへの移動が遅い等、曲の中で急に頑張ってもなかなか身につかないことを普段きちんと練習しておく必要があると思いました。音楽的には『音楽の三要素』について注目してみるとよいでしょうか。まずフレーズが知的にとれていないために、何も伝わらないか、その場の気分に左右されたフレーズの短い表現になってしまった演奏が多くありました。リズムについては、強拍にアクセント類がついているだけで、裏拍からの呼吸感がなく、生きたリズムになっていない場合がありました。さらに、旋律に気を取られるあまり伴奏が極端に弱まり、ハーモニーを味わうことを忘れてしまう演奏もありました。この曲を完成させるだけでなく、普段から基礎に目を向け、自分の長所は伸ばし、短所は改善していくよう気をつけたいですね。

愛知予選 松名深雪先生 声楽家、深雪おんがく教室主宰

愛知予選のピアノ部門を担当させていただいた感想を述べさせていただきます。まず、とても多くの参加者が集まったことは、ピアノをお勉強している方が多いということで嬉しいことでした。しかし、その中で考えさせられたこともあります。中学、高校以上の方の演奏はどの方も、一定のレベルに達した方ばかりで楽しく聴くことができましたが、キッズと小学生部門に関してはコンクールの考え方が参加者により様々だと感じました。コンクールは本選に行くこと、賞を取ることも勿論大切なことですが、本当はその先に目標を持つべきだと思います。その曲を勉強したから、フレーズの歌い方がよくなった、この曲のおかげで左右のバランスを、体重のかけ方を、和音の揃え方を・・・等、一曲ずつが深い意味を持って多くのことを学ばせてくれるものです。ですから、年齢に沿った内容の曲を学んでいくことが大切です。本日の予選で、高学年でいらっしゃるのに、明らかに幼児向けの曲をそつなく弾いて本選に上がる方が何名かみえました。曲の難易度は問われないものとは思いますが、他のコンクールの幼児や低学年の課題曲になる曲を高学年がチャレンジするのはどんな意味があるのかと疑問に思いました。選曲からコンクールは始まっています、今一度コンクールの目的を考え直し、コンクールの舞台に立つことで自分自身大きく成長できるようにしていって欲しいと思いました。

愛知予選 井上美絵先生 桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室講師

愛知予選に2回目の審査を務めさせていただきましたが、昨年6月の3倍もの参加者で驚きました。前回より全体的にレベルアップしている事を喜ばしく思いました。受験期である為、高校受験の方の出場や高校生の出場も多かったので聴きごたえがありました。このコンクールの良い所は課題曲が無いことで、バライティーに富んだ曲を聴け、審査も楽しくさせていただきました。また参加者、父兄も幅広い年齢の方の演奏が聴けて、とても刺激になったようです。初めてコンクールというものを受けた生徒ばかりでしたが、その中でも最年少のお母様から「父親が今日突然ピアノに目覚め、家に帰ってから作曲家や曲を検索し続けているのに驚いています。今日一日で我が家は変わりました」とのメールを頂き、私も大変嬉しく思いました。出場した生徒は趣味としてピアノを学んでいる子達でしたが、皆がこのコンクールに出場したことで、ピアノが好きになりやる気になったようで、過去に色々なコンクールに生徒を出場させましたが、こんなに効果があったコンクールは初めてです。私は常々生徒には音楽をまず好きになってもらいたいと強く願っていますのでこのコンクールの趣旨にはとても共感します。様々な事を感じた一日で、私も大変勉強になりました。このような機会を頂いた事に深く感謝しております。

東京Ⅱ予選 水谷志保美先生 水谷音楽教室主宰

今回の東京Ⅱ予選は、レベルの高い予選会でした。出場者の皆さんは、緊張しながらも見事に安定した演奏で、練習の成果が開花していましたね。個々の選曲もよく、ピアノが大好き!が伝わってくる演奏でした。次の課題は、個性の表現ですね。曲には、技術面や音楽表現面における難所が多々あり、克服する為に様々な練習を積まれた事と思います。難しい所程、原点に戻り、ハノンのリズム替えの様な地道な練習が功を奏しますね。正確な動きが出来たら、技術的表現力も豊富になり、情緒的表現力や音楽性が向上していきます。ここで重要なのは、楽譜からの正確な読み取りです。選んだ曲を正確に表現することから入ることはとても大切なことです。容易に様々な音源を入手することが出来、様々な演奏を聴くことが出来る今だからこそ、この原始的な、しかしごく当たり前の作業を怠らずに、正確に読み取る事の大切さを忘れてはいけません。技術力があるのに、‘こんな感じ~’での演奏は、もったいないです。次に大切なのは、その曲がつくられた背景です。どんな時代?楽器の状態は?音色は?作曲者の使っていたピアノの特性は?等を考える事で、曲への理解がぐっと深まります。ペダルはどんな感じかな?どんな踏み分けをするとより素敵になるのかな?この曲の強弱はどんな感じをイメージしているのか?ここのrit.ってどんな感じがいいのかな?1つ1つ考え吟味し,その上で自分流が構築されていき、個の表現が発揮される素敵な演奏に繋がっていきます。個性豊かな音楽表現はとても大切です。しかし、聴き手が、あれ?こんなリズムだった?少し違和感がある、という表現は、どうでしょうか。個人的に楽しむ場合はよいのですが、大勢の前で弾くときは、よく構成を考え表現していくことも必要ですね。心地良さと個性は大切なことです。アッ!そういう表現方法もあるのね!いいね!となる個性的表現を楽しみにしています。

東京Ⅲ予選 三浦明美先生 昭和音楽大学附属音楽教室講師

みなさま、コンクールの予選会お疲れさまでした!今回の管楽器は中学生と大学生の方々のエントリーでしたが、とても楽しませていただきました。出演された方全員が、ステージマナーもよく、笑顔で登場されていた方も多かったです。通常、コンクールというとどうしても緊張して固くなってしまう・・・ということが多いのですが今回は違いました。私は自分の生徒さんには、「コンクールであろうがコンサートであろうが、聴いてくださる方への感謝だけは忘れないように」と伝えています。出演者が緊張していようが完璧を目指していようが、それは本人の問題であり、聴衆は人生のうちの数分間を自分の音楽を聴くためにそこにいてくれるわけですね。ですから、今回の出演者の方々にはとても感動しました。演奏面でもみなさんとても音楽を楽しんでいらして、それがよくわかりました。よくコンクールという舞台でそんなオーラをだせるなぁと感心します。その上で、あえて今後の上達のためのアドバイスを。楽譜上の休符ではなく、長いフレーズを見つけ出して、表現できるとなおかっこいい場面がありました。ひとつひとつの音の向かっている先、方向性を見つけ出してください。通常、フレーズの終わりのほうの属七の和音のことが多いですが、その音へいきつくまで音楽が止まらないこと、クレッシェンドでもディミヌエンドでも。簡単ではありませんが、ご自身で分析してみましょう!そこから見えてくるものは、さらに説得力を増すと思います。

大阪Ⅱ予選 初田章子先生 華頂女子高等学校音楽科講師

このコンクール審査をさせて頂くことは今回が初めてでしたが、予選からのレベルの高さに驚かされました。また、予選段階からすべて公開審査とのことで、一般の方々が自由に会場に来て、コンクール受験生の演奏を見聞きし、より本来のコンサートに近い状態であることが素晴らしいと感じました。ただ、今回審査を担当させて頂いた時は午前中の早い時間の開始だったため、聴衆が大変少ない状態であったことは残念に思いました。コンクール受験生の方々は5年先、10年先の時代を切り拓いていかれる次世代の音楽家の卵たちです。これからの彼らの成長を想像しつつ、未来の音楽シーンの最先端に立ち会えることは、わくわくするような希望を感じさせてくれます。今後のコンクール開催において、一人でも多くの方々が気軽に会場に足を運んで頂き、若い世代の真剣な演奏と音楽を見聞きして頂き、将来の音楽家達を見守って頂ければと願っております。

大阪Ⅱ予選 藤原茂子先生 ヤマハ音楽教室講師

時期的に中学生、高校生、大学生は受験や学期末のテスト曲が多かった為、演奏の内容もとてもテクニック、表現力など多々煮詰まり度合いの高い演奏が多く、審査中かなり心を引きつけられました。流石に専門の学校でお勉強なさっている学生さんの演奏ですね♪って感じでした。それぞれ曲に応じた雰囲気などもたっぷりと幅広く表現でき、多彩な音色の変化など感心してお聴かせ下さった方も大勢いらっしゃいました。またキッズ、小学生の方々も、皆様身体全身が緊張いっぱいの様子の中で、今まで先生方に御指導頂いたご注意を忘れる事なく一生懸命演奏して下さっていました。まだ大きなホール、大きなピアノ、そしてコンクールに慣れていないかなと感じる幼い方もいらっしゃいましたが、皆様印象に残る個性豊かな演奏や細やかなテクニックなど、音楽性豊かな素晴らしいひとときを過ごさせて頂きました。ありがとうございました。

神奈川Ⅱ予選 吉川弘子先生 和田町音楽院、日本ピアノギャラリー講師、コール・フルーラピアニスト

最初のピアノ小学生部門、緊張からか演奏が止まる場面もありましたが、すぐに立ち直って先を弾き始めていたので良かったと思いました。次の小学生中学年部門は、楽譜の読み方も分かってきて初級から中級になり、弾きたい曲がひける!楽しさも伝わってくる良い演奏が多かったです。高学年部門や中学生部門になると、曲が難しくなってくるのでそれなりに音に幅が欲しいところなのですが、住宅事情や人の気質の変化と申しますか・・・おそらく普段電子ピアノで練習している為、そこまで表現できない演奏をしている感じも見受けられました。コンクール前だけでも何度かグランドピアノをレンタルしてリハーサルすると違うのに、非常にもったいないなぁと思いました。高校生や大学生部門、やはり将来音楽家を目指しているだけあって、よく弾き込んでいますし、解釈もしっかり伝わる演奏でしたが、声楽部門でも感じたのですが、このようなコンクールなど場数を踏む事がいかに大事なことか!!と思いました。

長野Ⅱ予選 早川育先生 MMR音楽事務所代表、NNMS講師、フルート奏者

昨年に続き、今回も須坂会場にて皆様の演奏を聴かせていただきました。毎年感じることのひとつとして、小さな演奏者の方々のステージマナーの美しさには感心いたします。年齢が上がると同時に緊張や照れなども心に芽生えていきますが、ステージに出た時から退場するまでが演奏となりますので姿も美しい演奏が出来るよう研究されたら良いかと感じました。今回は技術的にも音楽的にも素晴らしい演奏が多く、何度となく感動をおぼえました。今後の課題として感じたことは、技術面では細かい部分をより正確に、音楽的には強弱やフレーズをより豊かに表現できるよう練習を続けていただきたいと思います。地区本選も、ぜひ納得のいく演奏ができるよう頑張ってください。

埼玉Ⅳ予選 中村ゆか里先生 桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室講師

弦楽器、木管楽器、金管楽器を審査させて頂きましたが、今回も全体的にとてもレベルが高く大変嬉しく思いました。特に中学生、高校生のお子さんの成熟した大人っぽい音楽性が目につきました。音楽受験を控えているお子さんも中にはいるかと思うと、この様な人前で演奏をして先生方に聴いてもらって客観的なアドバイスを頂く場があることは、お子さんにもいい経験になりますし、このコンクールのひとつの良さにも繋がっていると思います。注意点1点だけ指摘させて下さい。今回、曲目を間違えて提出していて残念ながら失格になってしまった子がいらっしゃいました。この様な事はかなり稀な事例かとは思いますが、この子は非常によく勉強されていましたし、音楽的にもとても卓越していたお子さんでしたので非常に残念でした。もちろん舞台上での演奏が一番大事ですが、準備段階での事務手続きの面でも、チェックを怠らない様に心がける事も大事かと思いました。

埼玉Ⅳ予選 山本直子先生 やまもとなおこフルート教室主宰、Royal Music Garden講師

「予選」でありながら、全体的に非常にレベルの高い演奏を聴かせていただきました。舞台マナーも皆様とてもよく勉強されていて、特に弦楽器の方たちは顔の表情までも曲調に合わせて変化していたり、最初と最後の一礼でニコニコした表情をされている方がいて、とても好印象でした。技術面、とくに指回りなどはとてもよく練習されている印象ですが、ダイナミクスの変化や音色の変化、音程、和声などをもう少し勉強し、レベルアップ出来るともっと素晴らしい演奏が出来るのではないかと感じました。金管楽器の方々は吹奏楽やオーケストラに所属されている方も多いと思いますので、ピアノ伴奏で演奏する時にも音程に注意したり、ピアニストとのアンサンブルも研究され、ダイナミクスの変化ももっと積極的な演奏が聴きたかったです。フルート部門に出演された方々は全員がとても素晴らしい音色をお持ちでしたが、他の楽器に比べるとダイナミクスの変化を出しにくい楽器だと思いますので、音色の変化や、音ひとつひとつの長さやアタックを変化させるなどの工夫で、もっとメリハリのある演奏が目指せるのではないかと思います。今回おひとり非常にレベルの高い演奏聴かせてくれた方が、提出された曲目ではない曲を演奏し失格になってしまいました。コンクール参加申込書に、作曲家のお名前を間違えて書かれたのではないかと推測されますが、とてもいい演奏だっただけに非常に残念でした。講評用紙にはおひとりおひとりに対し、良かったところと直した方が良いところを心を込めて書かせていただきました。皆様の今後の演奏活動に少しでもお役に立てましたら幸いです。

群馬予選 中村陽先生 作編曲家

今回初めて皆さんの演奏を聴かせて頂きましたが、技術レベルにおいては総じて水準が高いと感じました。中にはプロのコンサートなどで普通に演奏されている楽曲もありました。各人、それらを当日までにきちんとまとめ、ステージで最後まで演奏したということは大いに誇りに思って良いと思います。今後もその姿勢を貫き、音楽を楽しんで勉強して下さることを願います。しかしながら、音楽的なことではまだまだ課題が多いように感じました。何を伝えたいのか、どういう音楽がしたいのか。皆さんの先生方にも同じようなことを何度も言われているのではないかと思います。聴く人にそう思わせてしまう要因は、楽譜の読みの足りなさであったり、技術が伴っていなかったりなど色々ありますが、一番はやはり「積極的に表現する」ということがまだ足りていないのだと思います。「10倍大げさに表現しなさい」「恥を捨てなさい」というような指摘には聞き覚えがあるのではないでしょうか。ではどうすれば人に伝えられるのか。それはやはり皆さんの努力と思い切りでしょう。無責任な言い方ですが、自分で勉強して、自分で色々試してみて、たくさん失敗して、失敗したら反省して、また試して、、、。これを繰り返すことによって「今度は“こうしてみよう”」「次のステージでは“もっとこうしてみよう”」というように、“こうしてみよう”が生まれてくると思います。その“こうしてみよう”を積み重ねていくのです。「伝えたいこと、やりたい音楽=こうしてみよう」これをキーワードに、ぜひ頑張ってみてください。音楽の学習方法は様々です。ぜひ皆さんの先生方に、恐れることなく質問してみてください。喜んで教えて下さると思います。私がおすすめする方法をお話しします。単純なことです。1.たくさん音楽を聴く:クラシック、ジャズ、Jポップ、Kポップ、何でも良いです。2.たくさん聴くことで見つけた、心奪われる音楽を真似する:自分とは違う楽器だったとしても構いません。ピアノなどで耳コピをして自分で楽譜を作りましょう。CDをたくさん聴いて「なぜ心奪われるのか」を探りましょう。そしてそれを真似るのです。3.作った楽譜をゴミ箱に捨てる:自分で楽譜を作って、CDをたくさん聴いて、それをたくさん真似したら、楽譜なんて見ないでも演奏できますよね。お母さんが赤ちゃんをあやす時に歌う子守唄、家族の誕生日に歌うハッピーバースデー、楽譜を見て歌いますか?音楽とはそういうものだと思います。4.実行する:これが一番大事です。何事も、実行しなければ変わりません。皆さんの成長を楽しみに、私も精進したいと思います。ありがとうございました。

福島Ⅱ予選・本選 紅林美枝先生 郡山女子大附属高校音楽科非常勤講師、二期会会員

2月13日の福島Ⅱ予選、本選とも審査させていただきました。コンクールの審査員は初めての経験でしたが、非常によい勉強、経験をさせていただきました。心からお礼申し上げます。予選、本選に出場なされた皆さん、本当にひたむきで、日々の練習や勉強の積み重ね、そしてご指導されている先生方の熱意がこちらまでしっかりと伝わってきました。特に本選において中学生以上のピアノで出場された皆さんの演奏レベルは高かったのではないでしょうか。中には音大生とほとんど変わらない高い完成度の方もいらっしゃったと思います。高校生の声楽は、皆さん高校生らしい選曲で好感が持てました。高校生と言えば皆さん、専門的にレッスンを受けてからまだそんなに日がたっていないと思います。今は、基本的な発声を身につける時期でしょう。師事されている先生のレッスンをしっかり受けることはもちろんですが、自分からも素晴らしい演奏に数多く触れ、耳や感性を育てていくと共に、顔や身体の使い方なども研究して研鑽していっていただきたいと思いました。これからも出場された皆さんの御活躍を心からお祈りしております。

静岡予選 飯塚みゆき先生 浜松学芸高等学校芸術科講師

今回は静岡予選を聴かせていただきました。回を追うごとに演奏のレベルだけでなく、皆さんの挑戦する意識も高くなっているように思い、大変楽しみなコンクールです。さて、以前も演奏する時のアドバイスをいたしましたが今回も一つ気になりました点を…。皆さんホールなどの演奏は殆ど外履きですね。ステージですからいつもよりお洒落をして靴もヒールの高いものや、制服などでもローファーです。そこで気になるのはペダリングでした。おそらく毎日の練習ではスリッパや靴下(夏は裸足)かと思いますが、本番では底の硬い靴…しかもヒールとなると踏む高さなど感覚が変わります。ですから、上手く出来ず音が濁っている方が多くいました。一度、本番用の靴で練習してみましょう。ピアノの方以外、声楽や管楽器、弦楽器の方でも身体のバランスに影響はあると思います。本番一度きりの演奏ですから万全の態勢で挑戦してください。

香川予選 石本育子先生 たかまつ楽器音楽教室主事、四国二期会会員

2月27日(土)、香川県予選を審査させて頂きました。今回感じたのはピアノ部門ではキッズから6年生まで個性溢れる出場者が揃っていたということです。皆さん音色や音量調節・音楽性が様々で個性的であるということは、指導者のコピーではない演奏者自身の音楽が表現されている証拠で、とても好ましく感じました。ただ残念ながら楽譜との向き合い方が不十分に感じられた方もあり、リズム・フレージング・ペダリング・ディナーミクにおいて楽譜に記載されている音符や記号は何を意味するのか?を先生とご一緒にもう一度考えてみるとよいのでは?と思いました。もう一つは構造理解の問題です。まず楽曲の構造をきちんと理解することそして次にはその理解した構造を音色や音量・各声部のアーティキュレーションで充分表現することですね。例えば、メロディーの音色と伴奏部分の音色は変えるべきですが、左手→右手への受け渡される1つのフレーズは音色が変わってはいけません。作曲家の意図をしっかり把握して表現に必要な打鍵を意識的にしていくとよいでしょう。声楽は呼吸が深く支えが安定していて好感が持てました。ヴァイオリン、フォームの安定がよい音色やフレーズの表現に繋がると感じました。管楽器、皆さんよく吹いていらっしゃり特にフルートのレベルは高いと感じました。ただ旋律楽器はたとえ無伴奏曲であっても、機能和声で作曲されたものであるならば、しっかりと和声を感じて演奏すること、また今吹いている長音はどこに向かっているのか?を感じてそれを表現しようとすることが大切ですね。スタッカートもやや「いつも同じスタッカート」ではなく、今どんなスタッカートが求められているのか?を考えて演奏されたらよいでしょう。ご自身の音楽を精一杯表現すること、そしてそれを受け止めてくださる聴き手の心に「何か」を残せることを目指してこれからも励んで頂きたいと思います。

香川予選 眞砂美輪先生 香川県立坂出高等学校音楽科講師

今回初めてこのコンクールの審査をさせていただきましたが、各グループのレベルの高さ、とても驚きました。わたしは金管楽器が専門ですが、とくに普段審査をすることがなかなかないピアノ部門がとても印象的です。小さいお子様のレベルも、とても高いように感じました。「のびのび自分の音楽を表現している」ことに長けていたと思います。もちろん、普段自分の生徒たちのレッスンをしているときに「同じテンポ感の中で演奏すること」を意識させています。(これは特に自分のブレスの都合で速くなったり遅くなったりすることが多いという点から指摘することが多いのですが)もちろん、ピアノはそこまでテンポ感に影響しないかとは思うのですが、正確なテンポ感のなかで「のびのび」自分の演奏をしている、またいろんな音色で表現できているお子様が多かったのではないかと感じました。弦楽器、管楽器のみなさんもとても熱演だったと思います。無伴奏の演奏もあり、とてもみなさん美しい音色で表現されていました。ひとつ気になったことといえば、とくに現代の無伴奏の曲を演奏されるときに、rubato、フェルマータ、accelもそれぞれもっと深い意味があるかと思います。もっとその辺りを自分なりにもう少し吟味して演奏してもいいかな?と思いました。現在、世の中には多くの音源があり、素晴らしい演奏をすぐ聴くことができます。数えきれないほどの「お手本」があります。いろんな解釈もあるかと思います。もちろん、それをたくさん聴いて、これ!というものを取り入れるのがいいと思いますが、その「楽語」の意味となぜそこにあるのか、それを自分なりにどう表現するかをいろいろ練ってみてほしいなぁと思いました。逆に言うと、それほどの選択肢から選んで演奏するだけの技術はしっかりある、ということです。また半年後、1年後、また素晴らしい演奏ができるひとたちがたくさん受験されていたのではないか、と感じました。

神奈川Ⅲ予選 須崎真理先生 みすずが丘ピアノ教室主宰

今回は私が審査させていただいたのは、神奈川大会のピアノ予選でした。印象的だったのは、全体的にステージマナーが良かったことです。これまで拝見したどの大会よりも出演者、補助ベダルなどのサポートで出てこられる保護者の方ともに意識が高かったように思います。そしてやはり、それは演奏にも繋がるなと思いました。特に学年の下の方のしっかりした演奏に、発表会との違いをしっかり感じることができました。技術面では、装飾音符に苦しんでいる方が多かったように思います。飾りの音が逆にメインになっていたり、拍数に入りきらなかったり、何人かそこが気になりました。今後の課題にあげると良いと思います。あとは学年の下の方の左右の音のバランスです。わかってはいても調整するのは難しいですね。たくさん練習して、自分の奏でている音をちゃんと聴くこと、自分で伴奏がメロディーを消してしまっていることを認識するとが大事だと思います。周囲が「静かに」「抑えて」といって聞かせても、本人が自覚しないとこれはなおりません。これは学年に関係なく、演奏する方皆さんに言えることだと思います。先生や周りの人の意見も勿論大事ですが、ご自分でご自分の演奏によく耳を傾けてみてください。今後どんどんこのコンクールが向上していくといいなと思っております。

東京Ⅴ予選 佐藤季子先生 PTNAフェスティバル実行委員、元東京音楽大学附属音楽教室助手

御コンクールは課題曲がないということで、各出場者の方々が各自得意な曲を選ぶことができます。その点で今回拝聴させて頂きました地区では、年齢の低い方が内容的に難しい曲を選曲し、その実力を十分発揮し、素晴らしい演奏をなされていらしたことが非常に印象的でした。また、出場者の大多数の方々に当てはまることですが、ヴィブラートペダルを習得すると、より表現の幅が広くなると思います。そして重音、すなわち同時に複数の音を弾く時には、全て同じ大きさのレベルで演奏すると、お互いの音同士が、倍音の響きを消してしまう為、共鳴しなくなり、響きがあまり良くなくなってしまいます。重音を奏でる時は、どの音が1番重要かを考え、その音を他の音よりもより響かせて弾くようにすると、より美しく透明感のある心地よい音楽になっていくと思います。

東京Ⅴ予選 山﨑みのり先生 武蔵野音楽大学講師

東京Ⅴ予選を聴かせて頂きました。年長さんから大学生まで、皆さん緊張感を持ちつつ、しっかりと演奏していました。舞台経験の少ない方はとにかく場数を踏み、本番での経験を重ねて行くことが肝心です。今回緊張してしまった方も、この経験があったからこそ新しく感じたこともあるでしょう、それを今後に活かしてください。全体的には、音楽が「暗譜まで」に留まっていた方が多かったように感じます。他でもない、自分自身が、このフレーズをどこまで持って行きたいか、この和声感をどう表現したいか…一人の演奏の中に、そのひとが弾き込んだ結果自ずから出る音色の変化が、それぞれ少し乏しかったのが残念でした。もっともっと、良く自分の音を聴いて、自分の音を造っていってください。今後も期待しています。

東京Ⅴ予選 水谷志保美先生 水谷音楽教室主宰

全体的に演奏曲のレベルに対して、やや弾き込み不足のように感じました。みなさんの伸びしろは、無限です。自分自身にどんな可能性が潜んでいるのか、また、新たにどんなことが開拓していけるのか、枠を作らずに、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。コンクールや試験、発表会等、人前で演奏することが大前提である曲の練習においては、楽譜通りに弾けて、やっとスタートラインに立ったところです。いかに演奏したら、その曲の魅力を伝えることが出来るのか。どう演奏したら自分の魅力をアピールできるのか。研究課題は山積しています。その一つ一つをクリアしていくことで、魅力的な演奏が構築されていくことでしょう。もし研究するには、とても時間が足りなければ、可能な曲を選択するのも一つの方法でしょう。コンクールへの出場が、大きく成長するチャンスに繋がっていってして欲しいなと思いました。曲への向上心を抱くためには、その曲を好きになることです。そしてその曲を深く知ることですね。作曲家の事、時代や楽器の特質・流行を含めたその背景、等々沢山ありますね。同時に演奏者である自分自身の特性、即ちその曲に対する自分自身の技術的な長所や短所を知り、魅力的な演奏にするためにはどうすれば良いかを考えてみる事も大切ですね。長所はより伸ばし、短所は磨き上げて長所にすることもできますよね。特に大特訓をしなくても、ハノン等で指先の基本的な練習を反復したり、曲の中でもっと磨きたいところをハノンのようにリズム替えの練習をしたりすることでも、演奏は成長していきます。そして、自分が伝えたいことが豊かに表現できているか。豊かな表現力や情緒感は技術と内面の両立が必須ですね。安定した気持ちで演奏することも大切ですね。課題は沢山ありますね。今できる事から着手してみてもいいですね。ワンランク上の演奏を目指して、楽しみながら達成感を味わってくださいね。

福井予選 寺尾敏幸先生 仁愛女子短期大学名誉教授

今回の演奏密度は濃く、各種のコンクールの予選を通過できる上級の演奏でした。音楽の内容も善く理解し、若い生命力に溢れていました。特にフレーズを細かく読み取り、話法を組み立てようとされているのに感心しました。ただしフレーズを纏めるところで意識を失わないように。目的を高く置いてはりきった上でのタッチミスや細かな装飾音符がつぶれたりすることは良くあることで悔やむことなく次の努力目標にすればよいでしょう。バッハ、ハイドンの曲はチェンバロもしくは強弱の利かない初期のピアノのために作られていて、拍節感、和声感、上下に亘る色彩感、延音効果、cantabile唱法等の表現に欠かせないのが、装飾音とarticulationであり、それらを理解の上練習するといいでしょう。強迫部に強意の目的でモルデントやプラルトリラーが置かれていますが、左手の和弦やバスに頭を合わせ(on the beat)て不協(和)音を響かせることによって拍節感が得られます。それと、頭の音が打たれた瞬間にup beat を感じて弾けば細かい音は拍に収まります。又、少し速すぎますので、歌いながら指揮をしたり歩いてみると非和声音と和声音の組み合わせの妙の味わえる適正なテンポが見つかるでしょう。ベートーヴェンの曲も含め、同じ音形でのslurの有無やstaccatoとportatoを使い分けている意味を考えて弾き分けると説得力のある演奏となります。悲愴(3楽章)とテンペスト(1楽章)は2/2拍子、Allegroで3連符が多用され似ています。速すぎて3連符の緊迫感がなくならないように。悲愴:107小節からは大騒ぎにならぬよう和声奏を試みて和声機能を耳づくりして後、低音はnon pedal、16分音符はlegatoで、pから漸増して弾くと全体の音楽構成にはまるでしょう。声楽は素直な声質で、聴いていて心和むものでした。使う呼気が充分に声に成ること。最高音に対する身体と精神の構えを歌い出す前から準備しておくといいでしょう。

千葉Ⅰ予選 森本真由美先生 声楽家、ジュニアコーラスフェアリーズ主宰・合唱指導者

今回審査させていただいた予選千葉Ⅰ会場は、ピアノ部門と弦楽器部門の受験者のみでしたが、いずれのお子さんもよい緊張感を持ってしっかりと実力を発揮されているようでした。どのお子さんもしっかり練習しコンクールにのぞんでいらっしゃり、よく勉強していらっしゃると思います。レベルについては、毎回高いと感じています。特に学年が上になると、目を見張るような素晴らしい演奏を聴かせていただくことができますが、今回も将来が楽しみな、心に残る演奏をされたお子さんが多数いらっしゃいました。また、学年が低いお子さんでも、ヴァイオリンではしっかりとした技術を持ち、豊かな音楽性と伸びやかな美しい音色を奏でるお子さんがいらっしゃいました。そういった才能に触れあえると、審査させていただいているこちらもとても幸せな気持ちになります。またこのコンクールのよいところは、厳しさの中にも「育てよう」とする温かい雰囲気があるところだと思います。若い音楽家の芽を育てるこのコンクールの意義はとても大きいと思いますので、参加されるお子さんにも結果を今後の飛躍のために活かしてより一層、頑張ってもらいたいと思います。

大阪Ⅰ予選 中村真理先生 むさしの音楽院代表

ピアノだけでなく何名かの声楽と何名かの管楽器の演奏を聴かせて頂きました。声楽は年齢によって随分変わるものだと実感しております。年を重ねた分だけ先ず声の出し方や響き方がどんどんよくなって、表現力が増し、聴かせる歌になっていました。この方たちはこれからもっともっと伸びていくのだと確信できました。管楽器も同じく年齢で演奏が変わりました。まだ初心者の域を越えられない方もおられましたが、時間の問題で必ず上手くなるだろうと感じました。後の方達は技術的にはかなり高いものもお持ちで、あとは音楽的なものがこれからの主な課題であるように思いました。ピアノも結構よく弾く方が殆どでした。上手くまとまっているな…と感じました。表現力も豊かで指もよく動くのですが、中にはフレーズの一つ一つや各音のぞんざいさが目だっている方もいらっしゃいましたので、やはり丁寧な練習、とりわけ繊細なタッチを日々練習することは大事なことだと感じているところです。伸びしろのある方達でしたので今後が楽しみです。

兵庫予選 秋山文代先生 神戸山手女子高等学校音楽科講師

今回初めて、こちらのコンクールの予選審査を担当させて頂きました。自分の専門外の部門も審査、講評することに少し戸惑いはありましたが、キッズから大学生までの皆さんの熱演に接することができ、お引き受けしてよかったと感謝しております。私は声楽の専門ですが、仕事場ではいろんな楽器の生徒達と交流もあり、彼女たちの真摯に音楽へ向かう姿を目の当たりにし、そこから日々沢山の刺激を受けています。どの楽器でも、基礎力、表現力の豊かさは、演奏を聴かせて頂くと共通するものがあり、いい演奏はジャンルを超えて感動を呼びます。私個人的にはコンクール奨励派ではありませんが、個人個人が順位だけを争うのではなく、自分の「今」を見つめる機会、場と捉え、次へのステップに生かしていくという姿勢のもとに参加されれば、有意義なものとなるでしょう。今回の予選では突出した方はいらっしゃいませんでしたが、キラッと光るものをお持ちの方は何人かおられました。講評で少し触れていますが、選曲、これからの練習の仕方でグーンと頭角を現される方が出てこられるのでは?豊かな音楽表現力を持った若い方達の歩みを、ご指導の先生方と共に応援していければと思っております。

兵庫予選 秦彩奈先生 関西大学第一高等学校、音楽教室ハーモニー講師

みなさんが一生懸命練習に取り組んだ様子が大変よくうかがえました。音楽は自分が努力したぶんだけ自分に返ってくるので、日々の練習から120%の力を発揮できるように準備しておくことが必要です。練習と本番はもちろん違うので、練習通りいかなくても本番ではきっと自分の納得のいく演奏ができると思います。そのために一日一日を充実した時間を過ごすこと、自分なりに時間を有効的に使えるようになることも大切なことです。今回審査をさせていただいて感じた点ですが、時代と作曲者のことを勉強すればもっと素敵な演奏になると思いました。古典には古典の特徴、バロック時代にはバロック良さ、近現代には近現代の弾き方があります。その次に作曲者ですが、それぞれ国も年代も性格も違います。どのような雰囲気でどのような音でどう演奏すればよいのかを知って下さい。そうすると効果的な演奏につながり、自分だけにしか出せない魅力的な音が出せると思います。もう一点ですが、自分で録音した演奏を聴くこともとても大切です。録音したものを聴くと、思ったように演奏できていなかったりとたくさん課題が見つかると思います。演奏側と聴き手と両方になってみるのも非常に勉強になります。いろんな方向からチャレンジしてみて下さい。次の演奏も楽しみにしております。

広島予選 上野眞樹先生 元ドイツ・ヒルデスハイム歌劇場、広島交響楽団他各コンサートマスター

今日は全日本ジュニアクラシック音楽コンクールの広島予選を聴かせていただきました。年齢は4歳から20歳までと幅広く、楽器もピアノ、ヴァイオリン、歌、フルート、クラリネット、ユーフォニアムとバラエティーに富んでおりました。今回驚きましたのは、皆さんの音楽的、技術的レヴェルの平均値がとても高かったことです。小さいお子さんでも技術的にはしっかりと、音楽的には自然な表現をなさっている方が多かったです。先生方のご指導の賜物だと思います。専門柄どうしてもヴァイオリンには厳しくなってしまうのですが、音程を正しく取れるようになるのが今後の一番の課題のように感じました。若い方たちの演奏を聴かせていただき、大変刺激になったと同時に、これからの日本のクラシック界の発展が益々楽しみになりました!今日はありがとうございました!

広島予選 國吉三重子先生 呉尚美音楽学園園長

審査をさせて頂き、まずピアノで最初に感じた事は、小さな生徒さんのレベルの高さに関心致しました。勿論、年齢的に解釈の度合いがありますので一括りには出来ませんが、将来が楽しみなお子さんが多いと云う事です。骨格の問題で指先がしっかり支えられない等ありますが、全体としてよく弾けていると思います。表現も、しっかりリズムを感じてそれを上手く曲に反映させている人が何人もいました。また、綺麗に上手く歌わせている人もいました。声楽も、今から経験を積んでいく事で表現ももっと豊かになるでしょう。ヴァイオリンも楽器がどちらを向いて鳴っているか解って立たれている人がほとんどで、他のコンクールの様に、自分が正面を向いている方はごくわずかでした。その点も、指導されている先生方のレベルの高さを感じさせるものでした。管楽器も楽器自体が良く鳴っている方だと感じました。明るい音色で聴きやすかったです。技術的に難しい箇所はもう少しかな、と思うところもありましたが、練習次第で解決出来るところです。皆さん将来性を感じる演奏でした。審査を終え、コンクールの役割というところで、平素のレッスンより技術的にも内面的にも深く掘り下げて指導出来る絶好チャンスだと思います。ただ単に優劣だけを重視するのではなく、生徒の無限の可能性をどこまで引き出してやれるか?たとえ将来全く関係ない仕事に着いたとしても、多感な学生時代に、一心に打ち込んでいくと云う事を経験する事は、大きな財産になると思います。最後に、生徒さんにはコンクールの本当の目的をきちんと理解して望まれることを希望します。

神奈川Ⅰ予選 白川真理先生 ヤマハPMSフルート講師、フリー奏者、古武術奏法研究家

このコンクールの審査は今回が2回目です。審査員の中には、尊敬している音楽家のお名前も多数あり、お話をいただいた時に喜んで引き受けさせていただきました。当初、実際に自分の専門でないジャンルも審査するということに、戸惑いを覚えたのは確かです。しかし審査員同士の講評や点数は、当然といえば当然ですが一致しており、やはり「音楽」というものは、ちゃんと良い点も、至らなかった点も、共通認識として伝わってくることを再認識できました。コンクールという大きな緊張を強いられる場で、若い受験生の皆様は、皆精一杯の誠実な演奏をしてくださったと思います。予選で惜しくも落選となった方もいらっしゃいますが、こうした落選の体験が、次への進展の糧となるようにと、願っております。また高得点で本選に進まれた皆様は、どなたも素晴らしい安定感、技術力がありました。しかしながら、ここで私が感じたのは、全般的に若い方達の演奏がグローバルスタンダード化している傾向があるのではないか、ということです。技術の完成度は確かにある水準には達しているけれど、音楽の質といえば平板な印象を受けることが多かったです。技術というのは、本来、何かしらやりたいことへの熱望の中で生まれてきた手段です。空を飛びたいという熱望が飛行機を生んだように。その技術でやりたいことは何か?何のためにその技術を身に付けたのか?手段と目的を取り違えることなく、その若さならではの熱望をより感じさせてくださる演奏に出あえることを願っています。

神奈川Ⅰ予選 青木麻美先生 ヤマハ音楽教室システム講師

全体通して、皆さんこの日に向けて練習を重ねてきたと思われる演奏でした。ただ、いくつか気になったのは「手のフォーム」「テンポ設定」「表現力」です。「手のフォーム」はとても気をつけなければいけない部分で、フォームによって指の動きやすさも違いますし、ダイナミクスの幅にも違いが出てきます。「テンポ設定」も大切で、相応しいテンポで演奏しないと曲の雰囲気も意味も変わってきます。そして「表現力」がなければ、ただ音符が並んでいるだけ、になってしまいます。これらは、生徒さんが幼い場合は自分で気づくことは難しい部分なので、ご指導なさる先生のお導きで生徒さん自身が理解できるようにお伝えいただけたらと思います。生徒さんが輝くかどうかは、先生の意識の高さにかかっていると言っても良いと思います。コンクールからの帰り道、生徒さんが「緊張したけど、ステージの上で演奏して楽しかった」「練習は大変だったけど、コンクールに出て良かった」と思えるといいな、と願っております。

神奈川Ⅰ予選 斎藤節子先生 元桐朋学園音楽大学、東京音楽大学専任講師

演奏はメカニックと音楽性の磨きが大切です。それと、ピアノは音の美しさを作らねばなりません。タッチと聴覚が必要です。でも1月11日のコンクールで美しい音が出てる方が数人いました。音楽性は表現力です。演奏する時に必ずイメージを持ちましょう。それは風景であったり、色彩だったり、声であったりするのです。音楽は語らねばなりません。豊かな表現力を持って、磨きあげたメカニックが有れば必ず素晴らしい演奏になります。皆さん、コンクールの演奏で大いにステキなピアノを弾いて下さい。

岡山予選 池上久美子先生 アマービレ音楽院講師

①技術レベルについて:小学生から大学生まで審査させていただきましたが、どの方も自身の技術に見合った選曲で、楽譜に忠実かつ安定感のある演奏が多かったと思います。②音楽レベルについて:情緒感や表現力に関しては、今一歩聴き手に伝わるものが少ないと感じる演奏のほうが多かったように思います。ただ楽譜に忠実なだけでなく曲の情感、美しさ、曲に対する自分の思い、演奏する楽器の音色の美しさなど何か演奏を通して聴き手に伝えたいものをしっかり意識して演奏されると個性がでてくると思います。③今後のアドバイス:ステージマナーで一点気になったのは、演奏前のステージに出てくる時の姿勢がやや背中が丸くなっていたり、下向き加減で遠慮がちにお辞儀をされる方がいらっしゃったことです。聴き手は演奏前、ステージに出たときから演奏者を見ています。背中を伸ばし体幹をしっかり安定させて顔を真っすぐ保つことは、ステージ全体の響きを聴くこと、また必要な部分に力を入れ不要な部分の力を抜く部分脱力が可能になり、良い演奏にもつながると思います。

宮城予選・本選 渡邊美穂先生 常盤木学園高等学校音楽科非常勤講師

コンクールに参加され演奏された皆様は本当にしっかりと勉強されてそれを充分に表現出来ていました。レベルはとても高かったと思います。練習を積んだ十分な時間が誠実な演奏となり努力した一つひとつの部分が集中して音をコントロールしている姿となって伝わってきたと思います。若々しい素晴らしい未来を感じる演奏だったと思います。きっと今回の様々な貴重な経験がこれからの皆様の更なる素晴らしい演奏に生かされてまた聴かせて戴く機会に恵まれれば幸いです。ご成長を楽しみにしております。先生方、ご家族の皆様も応援いかばかりかとお察し申し上げ感謝申し上げます。

長野Ⅰ予選 寺島美紀先生 みきピアノ教室主宰

今回、長野予選にてピアノ・声楽・管楽器の演奏を聴かせていただきました。緊張感が漂う中、丁寧で流れの良い演奏をされる方が多く、皆さんコンクールに向けてよく勉強されていたと思います。技術的な点に関しては、速いパッセージなどよくさらえていたと思いますが、音楽的な表現がやや消極的に感じられる演奏が多かったです。もっと表現は大げさに、こういう音楽にしたい!というものが伝わる演奏を目指していただきたいと思いました。また皆さんの演奏をどこかで聴けることを楽しみにしています。

愛媛予選・本選 渡邊政枝先生 ワタナベピアノ教室主宰

今回、第30回全日本ジュニクラシック音楽コンクール予選・本選の審査をさせていただきました。キッズから大学生まで幅広い年代の方の演奏を聴かせていただき、どの演奏もコンクールに向けて日々コツコツと練習しているのが感じ取られ、レベルの高い演奏だったと思います。コンクールに限っての話ではないですが、本番で自分の実力を100%出し切るというのはなかなか難しいことだと思います。出演者の中には惜しくもミスタッチや音程が不安定な方がいらっしゃいました。なかには「また聴きたい」と思うレベルの方もいらっしゃいました。「また聴きたい」と思わせてくれる方の演奏には、自分が今の演奏を通して何を表現したいのか、聴き手にどういうことを伝えたいのか、しっかりした自分の意思があると思います。普段から自分自身が演奏している音をよく聴き、理解し、不安定な所を何度も繰り返しゆっくりと練習してみてください。ただ音を並べるだけでなく、楽譜を正確に読みとり、楽譜の中にあるメッセージを表現する力を身に付けて、練習に励んでください。これからのますますの成長を心から応援しております。

愛媛予選・本選 桑原知七先生 愛媛県立松山東高等学校弦楽部講師、サウンドガーデン音楽教室講師

2016年1月16日、愛媛県今治市公会堂で行われた予選・本選の審査をさせていただきました。年長から大学生までの参加者の、真摯に演奏に取り組む姿にとても胸が熱くなりました。特に年長~小学校低学年の方達の小さな音楽家ぶりは頼もしく、鍛錬を積み重ねた技術で豊かな表現をされました。小学校中学年以上になると、曲の難易度も高くなる中しっかりと作曲家の意図をくみ取り、豊かな表現で技術的にも素晴らしい演奏も聴くことができました。全員が本選に進み、更に熱の入った演奏をしていただきました。ピアノ、声楽、ヴァイオリン、フルート、ホルン、ユーフォニアム、トランペットと、演奏手段は異なっても、それぞれに良い響きを目指して演奏に取り組んでおられたように思います。今後益々演奏技術に磨きをかけていただき、ホールに響き渡る素晴らしい音を聴かせていただきたいと思います。そのためには、常に自分への課題(身体のクセや、演奏の傾向など)を客観的に認知して、克服と昇段を繰り返すことが大切だと思われます。また、音楽に取り組むにはご本人のたゆみない鍛錬の他、先生の熱心なご指導、ご家族のあたたかいサポートが不可欠です。音楽に打ち込める環境に感謝を忘れず、いろいろな経験の中から人としての幅を広げて益々精進されることを祈念いたします。

北海道予選 三津橋萌子先生 北海道二期会準会員、声楽教室主宰

今回ジュニアクラシック音楽コンクールで審査をさせていただき、まず全体的に受験者の皆さんのレベルが高い印象を受けました。その中でも特に魅力的な演奏をされていた方々からは共通して、技術に優れている事はもちろん、自分なりの曲のイメージを持っていて、しっかりその曲の世界の中に身を置けていらっしゃるような印象を受けました。そのような演奏が出来ている方は表情も豊かで身体が柔軟に動けていらっしゃいますし、聴いている側もどんどんその世界に引き込まれていきます。私は学生時代、あるイタリア人の声楽の先生の講義を聞き『技術は解放である』という言葉に大変感銘を受けました。技術があってこそ、やっと心身の解放が出来るという事ですね。技術がなければいくら表現したい事があっても気持ちだけが先走ってしまい、体の力が入ってしまったり、強弱の変化をつけられずフォルテ一色になりがちです。ですのでまず今回受験された皆さんには技術を磨くことにますます努力していただきたいと思っております。ただ、今回のコンクールで勿体無いと思ったのは、全体的に丁寧に美しく演奏が出来ていながらメロディが浮き出てこない演奏をする方(メロディーが歌えていない、演奏に表情がない)、また技術的に優れた演奏が出来ているのに曲の間奏中に素に戻ってしまったり、立ち姿や表情に気が配れていない方が何人かいらっしゃった事です。楽譜に忠実に演奏する事は一番大切な事ではありますが、技術面が正確に出来ていれば良いと思わずに、このフレーズをどうやったら素敵に聴かせる事が出来るか、という研究をしたり、この曲はどんな色をしているだろう、どんな風景が合うだろうか、など自分なりのイメージをしっかり持って、そしてぜひ自分の演奏している姿を客観的に見る目を持って毎日練習をしていただきたいと思います。正確さに捉われすぎて演奏を楽しむ事を忘れずに、魅力的な演奏家を目指してぜひこれからも頑張って下さい。

福岡予選 辻香苗先生 大分県立芸術文化短期大学非常勤講師

全日本ジュニアクラシックコンクール九州大会の福岡で予選審査に参加させていただきました。当日は大寒波による雪の為、福岡在住でない方はホールまで到着できず、演奏を聴くことができなかったのはとても残念でした。それでも無事にコンクールに参加できた方々、皆さん、素晴らしい堂々とした演奏でした。年齢、楽器はさまざまですが、予選といえども全員の方の演奏のレベルがとても高かった。驚きでした。将来、もっともっと色々な時代の作曲家、作品とふれあって、音楽の世界を広げていただきたいです。

福岡予選 佐藤久美先生 ぴっころの会主宰、ピアノ講師

福岡予選の審査をさせていただきました。この日は大寒波で福岡でも積雪のため道路が凍ったりもあり、交通も乱れたりしたので、残念ながら欠席された方もいらっしゃって、出席された方達もいらっしゃるだけで大変だったのではないかと思います。その中で全体的に皆さんしっかり演奏されていて、ギリギリ予選通過という方は一人もいらっしゃらなくて、どの部門の方も本選での曲はどんな風に演奏されるのか聴いてみたいと思わせるような演奏だったと思います。個々の注意点などについては講評用紙に書かせて頂いてますので省略させてもらいますが、ピアノの小学生は小さいのでまだ指がしっかりしてないので、もう少し大きな子が演奏した時のような音には至りませんが、難しい曲をそつなくしっかりまとめて弾いていらっしゃって、これからの成長が楽しみな演奏でしたし、声楽や管楽器の方達もこれからの練習でもっと伸びるであろう可能性を感じる演奏をされていたと思います。それから伴奏者の方ととても合っていて、上手く自由に気持ちよく演奏できてるなと思わせる方もいらっしゃいました。これからも自分の音をよく聞いて、綺麗な音で全体のフレーズを感じながら自分の演奏ができるように練習頑張ってください。

埼玉Ⅲ予選 中島麻己先生 森の音楽教室講師 、ピアノグレード検定会代表

ピアノ部門で、5歳から高校生までを聴かせていただきました。今回、選曲の難しさをあらためて感じながら聴いておりました。難曲に挑戦されている方は、テクニックがおいついていない中、なんとか自分のできることをしようとしているのが見受けられるのですが、違う曲を選んだらもっと良い演奏ができたのではないかと思いました。逆にテクニック的に御自分の手中におさめられる曲を選んだ方は、上手にまとめあげて弾けているのですが、もう少しレベルアップした曲でも聴いてみたかったと思いました。また、全体的にオクターヴの和音のテクニックが身についていない方が多かったと思いました。指を広げて、更に上半身のエネルギーを指先に伝えながら脱力もできなければいけませんので、難しいテクニックですが一番聞きたい音は何かを考えながら、耳を働かせてより良い音を出せるよう確認しながら練習されると良いと思いました。また細身の方が多く、どうしても重みのある音をだすのが難しいようでした。逆に強い音を出している方は、力んでいるために硬い音質になり、ずっとそれで弾くと手をいためてしまう原因にもなりかねませんので、やはり脱力と瞬発力で音を出す訓練が必須だと感じました。ピアノという楽器は、音を出すための準備をしなくても鍵盤を押せばその高さの音が出るため、無造作に出してしまうこともあると思います。その中で御自分が出したい音のイメージを膨らませ、より良い、そして曲に合った音を出していく工夫が必要だと思います。今後も様々な時代の色々な作曲家の作品を通して、音づくりを楽しみながらコンクールや発表会などで人前で弾くことに挑戦していただければと思います。

埼玉Ⅲ予選 石塚優紀先生 ヤマハ音楽教室ニコニコ堂、東京音楽学院講師

この日参加された生徒さん、良い緊張感を持って集中して日頃の練習の成果を表現されていました。様々な時代、作曲家、曲の形式などありましたが、まず各々の作曲家の持つ特徴、音色についてもう少し研究してほしいと思いました。例えばベートーヴェンの音色について、もっとしっかりとしたタッチでかっちりとした音作りをしてほしいです。邦人の曲については、変化する和声感をもっと感じてほしいです。そして邦人、近現代については、音の弾みやメリハリ、拍子感、フレージング、楽譜に忠実に弾かれるとよいと思いました。全体を通して、各々の曲のテンポ設定をもっとその曲が持っているテンポに近づくべきと思います。さらに各生徒さんが緊張という場の中でも、曲の形式スタイルを守った上で、自身の言葉をプラスしながら、表情豊かに、柔軟さをもって良い響きを感じながら演奏されることを望みます。

岐阜予選 加藤菜津子先生 加藤菜津子ヴァイオリン教室主宰

予選を担当させていただいたからこそ思うことですが、完成度の低い演奏が気になりました。コンクールなのですから、担当する先生とご本人でやるべきことをすべてやったといえる練習をして、コンクールにのぞんでいただきたいと思います。まだまだ練習をつみかさねれば上達するところが明らかにあったり、またメトロノームを使用するなど、あらゆる角度から工夫した練習が足りない方が多いと感じました。もちろん数名やるべきことをやった演奏の方がみえましたが、そのような方はやはりステージに登場するときから雰囲気が違います。音楽としてのレベルですが、もっと音楽できる余地があるのにやらされている感じがみえる方もいらっしゃいましたが、音楽の楽しさや歴史など、付随するものも子供たちに伝えていらっしゃるのだろうかとおもいました。今後の学習にたいしては、月並みですがやはり部分練習をつきつめていただきたいと思います。

愛知予選 井上美絵先生 桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室講師

本日、愛知予選に2回目の審査を務めさせていただきましたが、昨年6月の3倍もの参加者で驚きました。前回より全体的にレベルアップしている事を喜ばしく思いました。受験期である為、高校受験の方の出場や高校生の出場も多かったので聴きごたえがありました。このコンクールの良い所は課題曲が無いことで、バライティーに富んだ曲を聴け、審査も楽しくさせていただきました。また参加者、父兄も幅広い年齢の方の演奏が聴けて、とても刺激になったようです。初めてコンクールというものを受けた生徒ばかりでしたが、その中でも最年少のお母様から「父親が今日突然ピアノに目覚め、家に帰ってから作曲家や曲を検索し続けているのに驚いています。今日一日で我が家は変わりました」とのメールを頂き、私も大変嬉しく思いました。出場した生徒は趣味としてピアノを学んでいる子達でしたが、皆がこのコンクールに出場したことで、ピアノが好きになりやる気になったようで、過去に色々なコンクールに生徒を出場させましたが、こんなに効果があったコンクールは初めてです。私は常々生徒には音楽をまず好きになってもらいたいと強く願っていますのでこのコンクールの趣旨にはとても共感します。様々な事を感じた一日で、私も大変勉強になりました。このような機会を頂いた事に深く感謝しております。